研究課題
基盤研究(B)
「われわれは何ものか?われわれはどこから来るのか?どこへ行くのか?われわれは何を期待しているのか?何がわれわれを待っているのか?」エルンスト・ブロッホの主著『希望の原理』はこの5つの問いで始まっている。そして、これらの問いには彼の哲学がすべて包括されている。すなわち、人間主体の本質はそれ自体では見出しえず、人間の過去と未来の関係の中から究明されるものであるが、人間も世界も依然としてそれら自身の究極的自己実現への途上にあり、したがって、人間主体の期待内容と世界主体の期待内容とが実現されて初めて「人間とは何か」という問いに最終的解答が与えられることになるというわけである。人間のみならず世界も夢を見ていると考えるブロッホの、いわば「未意識と未存在の哲学」は、したがって、その実現にアポリアを抱えている。すなわち、意識としても存在としても未決定である人間と世界が決定されるとすれば、その想定自体が両者の前提的規定に矛盾するのではないかという疑問にどう答えられないと思われるからである。ブロッホはこのアポリアに、人間と世界の可能性をキリスト教的弁証法的に、時間的に把握しなおすことによって答ええたと主張するが、現在の認識からすると、それは依然としてひとつの仮説にとどまっていると考えられる。ブロッホにとって芸術とは「相乗された生」である。つまり芸術は、過去、現在の現実の模倣ではなく、その中の未決の未来を導きの糸にして可能な未来をアレゴリー的かつ象徴的な一時的な達成として表現することであり、そのすぐれた作品は実証的でありながら未完の未来へ開かれていることによって、一時代の達成と未来とを完璧に現実化できることになるのである。ブロッホはこうして、美学でも時間的に否定性を肯定性に結びつけるが、哲学の場合と同様に、彼の美学も依然として美の実現のアポリアを論理的に解決する興味深い仮説にとどまっている。
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Interkulturalitat, hrsg. v. Y. Ariizumi u. a. Harrassowitz Verlag 論集
ページ: S.127-133
ドイツ文学論集(日本大学文理学部ドイツ文学科紀要) 27号
ページ: 108-121
Interkulturalitaet, hrsg.v.Y.Ariizumi u.a., Harrassowitz
ページ: 127-133
Essays on the German Literature (Nihon University, College of Humanities and Sciences) No.27
Befremdendes Lachen, hrsg. v. Hans Peter Bayerdorfer u. a. indicium verlag 論集
ページ: S.132-162
Gonglimunhak(韓国ドイツ文学会誌) 94巻第2分冊
ページ: 32-43
Befremdendes Lachen, hrsg.v.Hans Peter Bayerdoerfer u.a.iudicium verlag.
ページ: 132-162
Gonglimunhak 94-2
Neues Jahrhundert, neue Herausforderungen, hrsg. v. Asiatischer Germanistentagung in Beijing 論集
ページ: S.49-61
Neues Jahrhundert, neue Herausforderungen, hrsg.v.Asiatischer Germanistentagung
ページ: 49-61
立教経済研究 第57号3号
ページ: 1-14
Econimoic Studies on Rikkyo 57-3
Deutschland und Japan im 20. Jahrhundert, hrsg. v. Karl Anton Sprengart u. a. Harrassowitz 論集
ページ: S.117-127
Deutschland und Japan im 20. Jahrhundert, hrsg.v.Karl Anton Sprengart, Harrassowitz.
ページ: 117-127