本年度は、14年度に引き続き、基礎的な語彙の中の動詞、形容詞、後置詞に関して、その語法的な研究を行なった。具体的には、どのような要素を取りうるかを、統語論的・形態論的に詳細に記述した、満洲語語法データベースの作成を開始した。この作業は、体系を異にする文語と口語、それぞれについて行ない、随時両者の比較対照を行なうことにより、統語論的・形態論的な変化をも明らかにすることを目指している。 さらに、上記の基礎的作業の上に立って、記述文法の研究を開始した。動詞述語、形容詞述語、付加語、取り立て、ヴォイス(受動、使役など)、テンス・アスペクト、ムード、指示の問題、補文、引用節、連用修飾節、連体修飾節などについて研究、記述を行ないつつある。 また、これらと平行して、14年度に引き続き、満洲語口語の音韻論・形態論的研究も行なっている。 海外での調査としては、満洲語口語の現地調査を、中国新彊ウイグル自治区において行なった。また、カザフスタンにおいて、カザフ語及び東干語に関する資料収集、言語調査を行なった。 具体的な研究成果としては、研究代表者の久保は、満洲語の擬音語・擬態語の音配列に関する研究を、周辺のウイグル語、モンゴル語などとも対比しながら進め、研究発表を行なった。分担者の早田は、満文と漢文の『金瓶梅』を対象として、漢語と満洲語の一人称複数代名詞に関する研究を行ない、公刊した。『大清全書』の翻刻・索引の改訂も行なった。
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