本年度は、15年度に引き続き、基礎的な語彙の中の動詞、形容詞、代名詞等に関して、語法的な研究を行なった。動詞、形容詞については、当該の単語がどのような要素を取りうるかを、統語論的・形態論的に詳細に記述した、満州語語法データベースの作成を進めた。この作業は、体系を異にする文語と口語、それぞれについて行ない、随時両者の比較対照を行なうことにより、統語論的・形態論的な変化をも明らかにすることを目指している。年度内の完成は無理だったが、近い将来に、音韻論的情報と語法データを盛り込んだ『満洲語口語語彙集』を刊行する予定である。 そのほかに久保は、これらと平行して、15年度に引き続き、満州語口語の音韻論・形態論的研究も行なった。満洲語口語(シベ語)の現地調査を、中国新疆ウイグル自治区において行なった。早田は、満州語訳『三国志演義』24巻の満州語と、原漢文の三國志の二本の電子化を行なった。 具体的な研究成果としては、研究代表者の久保は、満洲語口語の音韻論に関する論文1篇を公刊した。また口語文法全般に関する論文1篇が出版予定である。分担者の早田は、「満洲語の繋辞と存在動詞【中間発表】」および「満洲語の指示代名詞と指示形容詞【中間発表】」の二つを纏めた。前者は16年10月に大東文化大学で開催された「アルタイ語会議」で発表した。これらはそれぞれ論文として、来年度発表の予定である(報告書には掲載の予定である)。
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