研究課題/領域番号 |
14310229
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
北嶋 美雪 学習院大学, 文学部, 教授 (10129215)
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研究分担者 |
木曽 明子 大阪大学, 名誉教授 (10088015)
北野 雅弘 群馬女子大学, 文学部, 助教授 (80195271)
吉武 純夫 名古屋大学, 文学研究科, 助教授 (70254729)
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キーワード | 弁論術・修辞術(レトリック) / デモステネス / 説得の論理と修辞 / 「美しい死」 / アッティシズム / スタシス / 法廷弁論 |
研究概要 |
本研究は、紀元前4世紀の政治家でアッティカ弁論術の泰斗デモステネスの弁論について、主要作品の論理構造と修辞の多角的な分析により、語り手と聴衆の間に成立する説得のメカニズムを、素材そのものに則して解明し、加えて、後世におけるその受容と評価の意義を探り、デモステネス弁論の現代における有効性を提唱する。 吉武は、ギリシア悲劇の「説得」には、論理に基づく以外の構造のあることを確認し、その上で、現存するアッティカ葬送演説の全テクストを検討、「美しい死」をはじめ「美しい」という用語例を分析し、デモステネスの「葬送演説」の独自な論法に着目。その成果を「勝利者たる戦死者の論理:Demosthenes第60弁論のオリジナリティ」として発表した。木曽は、ローマの文人たちがアッティカ弁論の復権運動(アッティシズム)の中でデモステネスに標的を定めた経緯を概観し、「デモステネスはなぜ雄弁か」と題し、彼の弁論が前4世紀民主政アテナイを実際に動かしたばかりか、文芸作品として評価される理由を解明したハリカルナッソスのディオニュシオスの所論を再構築する発表を行った。更に研究協力者、杉山晃太郎は、アリストテレスの発展的受容の上に新たな展開を見せるヘレニズム期のヘルモゲネスの広範な弁論術の体系のうち、特に法廷弁論の「スタシス(争点)」論に着手、その序論として、ヘレニズム期弁論術の状況、ヘルモゲネスに至る「スタシス」研究の流れ、『スタシス論』が後世に確立したステータス等について報告した。 以上いずれも新たに得られた知見であるが、同時に、本年度は、北嶋の統括の下に、デモステネスの「法廷弁論」諸作品における「説得の技術」の論理構造の検討と修辞技法の追跡を行った。次年度は「議会弁論」をも含めて、上記目的に沿った研究を更に推進する。
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