研究課題/領域番号 |
14320006
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
川端 康之 横浜国立大学, 大学院・国際社会科学研究科, 教授 (70224839)
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研究分担者 |
庄司 克宏 横浜国立大学, 大学院・国際社会科学研究科, 教授 (60235710)
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キーワード | OECDモデル租税条約 / IBFD / 貯蓄 / 源泉徴収税 / 欧州憲法条約草案 / 裁量的政策調整 / ユーロ・グループ / 欧州中央銀行 |
研究概要 |
資本移動の自由に対する具体的障碍の一つとして欧州司法裁判所において重要な裁判例が連続して現れている税制面での欧州委員会が公表した法人税の包括的調和パッケージ及びEU有害な税の競争プロジェクトと、OECDの有害な税の競争プロジェクトの比較検討を行った。そのために、社団法人租税研究協会から受託したOECDモデル租税条約(2003年版)の邦訳を行い、2003年12月に刊行した。翻訳作業の過程においては、本学大学院生及び外部の専門家の研究協力も受け、欧州連合加盟国が締結する租税条約との比較を行った。さらに、EUよりは緩やかな地域連語として注目されるASEAN諸国の租税条約、一部加盟国(マレーシア)のモデル租税条約についても調査研究を行い、国際協力機構短期専門家派遣としてマレーシア歳入庁において周辺国からの参加者も含めてASEAN諸国の国際課税担当税務官僚に対して租税条約及び国際租税回避に関する講義を行い、意見交換を行った。OECDモデル租税条約の翻訳とマレーシア歳入庁での講義は、本研究過程で外部から受託したものであるが、それらの内容は、より精密な条約(政策)比較と現地担当官僚との意見交換など本研究を大幅に進捗させるものである。 EU法制を根本的に見直すための欧州諮問会議が開催され、その結果、欧州憲法条約草案が採択された。これは政府間会議においては、まだ継続審議の途上にあるが、正式合意され批准・発効に至るならば、EUの金融・経済法制を含めEUの経済ガバナンスの在り方に大きな影響を及ぼす。そのため、欧州憲法条約草案の法的分析を行った。草案では、EUと加盟国の間における権限関係の明確化が行われ、EUの排他的権能、EUと加盟国の共有権能および加盟国の権能に分類されている。ユーロ圏における金融政策はEUの排他的権能に属し、欧州中央銀行が責任を負う。一方、加盟国の権能であってもEUが一定範囲で行動できる場合として、加盟国の経済政策および雇用政策の推進および調整が含められている。ユーロ・グループ(ユーロ参加国のみの経済・財務大臣で構成される非公式会合)が財政規律の調整とその監視の強化および経済政策指針の設定を行う。また、その一方で、条約改正を要しない分野としてEUの経済政策法制におけるソフトな枠組としての裁量的政策調整(the open method of coordination)についても研究を行った。これは、協力の奨励、最善の慣行の交換ならびに加盟国にとっての目標および指針についての非強制的な合意手段であり、それらの目標の達成の進捗状況を定期的に相互監視することにより加盟国が自国の努力を他国と比較し、その経験から学習することを可能とする手法であり、マクロ経済安定、労働市場改革、マクロ経済対話などの分野で用いられている。さらに、以上のような展開を含めて、EU法全般にわたる体系書の執筆・出版を行った。
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