研究課題/領域番号 |
14320006
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
川端 康之 国立大学法人横浜国立大学, 大学院・国際社会科学研究科, 教授 (70224839)
|
研究分担者 |
庄司 克宏 慶應義塾大学, 大学院・法務研究科, 教授 (60235710)
|
キーワード | OECDモデル租税条約 / 源泉徴収税 / 無差別条項 / 貯蓄 / 欧州憲法条約 / 警察・刑事司法協力 / ユーロ・グループ / 欧州逮捕状 |
研究概要 |
本年は、拡大欧州の実現による、欧州委員会の政策動向と、従来からの欧州基本条約の各政策面での動向に調査の重点を置いた。 まず、租税政策については、欧州基本条約上の各基本権と加盟国国内法上の租税立法における居住者・非居住者の扱いの相違について、従来からのECJの裁判例の延長に、最近の事例の動向も検討した。これに関連して、欧州の租税法研究者の研究団体であるEuropean Association of Tax Law Professorsの年次大会がパリで開催され、そこではこの基本権と国内租税立法の抵触がテーマとされたため、川端は同年次大会に参加し、最新動向について情報収集を行った。年次大会での議論において興味深かったのは、1980年代からの基本権条約と加盟国租税立法の抵触に関する議論を経験した今日においてさえ、基本権の具体的適用基準と、国際基準であるOECDモデル租税条約上の無差別条項の適用基準との質的相違について真摯な議論が行われた点であった。 我が国は日米租税条約の改訂を終え、今後の租税条約改訂交渉の相手先国としてアジア諸国と並んで欧州諸国を念頭に置いた対外租税政策の変更を行ったが、今後の欧州諸国との間の租税条約交渉においては、我が国側は、欧州基本権に基づく日系現地企業の租税面での資本無差別の徹底を図ることが重要課題として考えられよう。この日米条約改訂とわが国の租税条約政策の変更については、韓国租税法学会からの招聘により、ソウル市で開催されたシンポジウムにおいて研究報告を行った。 次に、EUにおける資本自由移動を含む基本的法制を規定するEU/EC条約改正としての改正する欧州憲法条約が2004年10月29日に署名されたのに伴い、同憲法条約の概要と評価を行った。資本の自由移動に関する規定自体には変更はないものの、ユーロ・グループに属する加盟国の権限が若干強化されるとともに、テロ対策を念頭に置いて、マネー・ロンダリング等に関連する警察・刑事司法協力が強化され、従来の全会一致に基づく政府調協力から特定多数決を原則とすることや欧州検察官事務所設置の可能性が規定された。また、派生法においては欧州逮捕状が本格的に施行され、双方可罰性を一定範囲で廃止する新たな試みが財政犯を含めて開始されている。以上の点について、研究調査を行った。 このように、本年は研究計画のうち第3年度であったが、欧州地域の新しい動向も踏まえて調査研究を行った。
|