研究課題/領域番号 |
14320012
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松井 芳郎 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00022418)
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研究分担者 |
富岡 仁 名古屋経済大学, 法学部, 教授 (00126880)
佐分 晴夫 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70093036)
岡田 泉 南山大学, 法学部, 助教授 (10024093)
小畑 郁 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40194617)
坂元 茂樹 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20117576)
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キーワード | グローバリゼーション / 国際法 / 国際協力ネットワーク / 国際基準の遵守確保 / 司法化 / 人権 / 民主主義 |
研究概要 |
グローバリゼーションという社会現象は、国際法の観点から見た場合、国際協力ネットワークの再編・強化という形で現れていることが、この研究の一環として行われた具体的な現象の分析を通じて明らかになった。人権の普遍的な適用に向けた自由権規約委員会の活動、国際人道法および国際刑事法による戦争犠牲者とりわけ女性の性暴力からの保護が制度的保障を伴って発展していること、国連海洋法条約の規定する紛争解決手続の着実な進展などにみられるように、国際協力ネットワークが、ときには既存の国際法の枠組みとの厳しい緊張関係を伴いながら進歩的・積極的な役割を果たしている。しかし、他方、安全保障理事会による違法な武力行使の追認と疑似「立法」、EU東方拡大過程に例示される民主主義のシンボルとしての機能、WTOにおける地域統合の進展などは、国際協力ネットワークのイデオロギー批判が必要なことを示している。 このような国際協力ネットワークにおいては、形式上第三者たる個人(法律)専門家の、国際基準の遵守確保のために果たしている役割(紛争解決、違反認定にとどまらず遵守の日常的モニタリング)が大きくなっており(いわば「司法化」)また、人権や民主主義といった従来国内社会で妥当するとされてきたイデオロギーが果たす役割が大きい。 こうして、国際協力ネットワークの再編・強化という観点から現在の国際法秩序を通観すると、国際法秩序は、平等な国家間の利害の調整という水平的な秩序ではなく垂直的な構造もあわせもつ、公法的構造を強くもつようになってきていることが分かる。このような構造は国際法の基礎理論に大きな影響を及ぼしていることは、これまでの分析から明らかになってきたが、なおその詳細については、今後の課題として残されている。
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