研究課題/領域番号 |
14320021
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
刑事法学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
斉藤 豊治 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00068131)
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研究分担者 |
守屋 克彦 東北学院大学, 法科大学院, 教授 (90328261)
白取 祐司 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10171050)
葛野 尋之 立命館大学, 法学部, 教授 (90221928)
武内 謙治 九州大学, 法学研究院, 助教授 (10325540)
山崎 俊恵 大阪経済法科大学, 法学部, 講師 (80388610)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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キーワード | 検察官関与 / 対審構造 / 少年の意見表明権 / 職権主義 / 当事者主義 / 付添人 / 抗告受理申立 / 少年係検察官 |
研究概要 |
共同研究は、(1)検察官の役割に関するわが国の実態調査、(2)諸外国における比較制度論的研究、(3)少年司法における検察官の役割に関する理論的諸問題という3つの柱に即して行なわれた。 (1)では、共通の質問票を用いて、検察官関与事件を担当した弁護士付添人、家裁調査官、裁判官からヒアリングの形で約10人から事例調査を行ない、さらに逆送事件の公判の調査等も行った。検察官のヒアリングは、「職務上の秘密」を理由に拒否された。改正少年法は、検察官関与を事実認定のための審判の協力者として位置づけており、原告官・訴追官ではないとした。その点、運用ではどうかが、我々の関心事であった。調査の結果、その役割は多様であり、協力者の立場から、積極的な活動を展開しない事例がある反面、当事者主義に近い運用が行なわれた事例もあった。そうした違いは、少年が事実を強く争っているかどうか、および主宰する審判官の姿勢の如何によるようである。 (2)の外国調査は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツを対象として、文献研究と現地調査を行った。現地調査では、検察官、裁判官、弁護士および処遇担当者からのヒアリング、および研究者との意見交換を行なった。アメリカ、イギリスでは、ほぼ完全な当事者主義的な手続が採用されており、すべての事件で弁護人が選任されている一方、検察官も全部の事件に関与している。事実認定に争いがある場合は、対審で審理が進められる。これに対して、フランス、ドイツでは、もともと刑事裁判が職権主義的手続を前提にしており、その枠組で少年審判も行なわれている。このように、各国少年司法における検察官の役割は、基本的には刑事裁判の構造に規制されている。また、アメリカでは検察官が少年事件の振り分けの権限を行使し刑事政策の積極的な担い手となろうという傾向が強まっている。同様な傾向は、フランス、ドイツでも見られる。イギリスでは、検察官ではなく、警察が主体となって、チームを作って少年事件を処理する方向が見られる。ただ、どの国においても、成人の刑事裁判と少年審判との違いは強く意識されており、少年の審判における意見表明、コミュニケーションの実質的な確保と少年の立ち直り、社会復帰を重視していることが明らかとなった。 (3)については、研究会の内部でも見解の違いがあり、検察官関与そのものに批判的な見解、検察官が関与するのであれば、対審化させるべきであるとの見解、現行法の建前を実体化させるべきであるとの見解等があり、さらに運用の実態を観察し続ける必要がある。
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