研究課題
本年度は、3つの活動を行った。一つは、日本の国際政治学の発展に関して、長老の国際政治学者の聞き取りを行った。たとえば、細谷千博、川田侃両元国際政治学会理事長、二宮三郎氏をお招きし、日本の国際政治学の黎明期、アメリカの国際政治学との関連、外交史、国際政治経済学からの日本の国際政治学の連続性、変容など貴重な資料が得られた。また、このような活動は、日本国際政治学会の研究部会の中でも行われ、若い研究者を巻き込みながら行われた。二つには、明治維新期までさかのぼって、さまざまな学会誌、一般雑誌、その他の資料にあたって、当時の日本の識者、研究者がどのような国際政治観、また国際政治の分析をしていたかを、整理した(しつつある)ことである。このような資料の収集と整理は、今まで行われてこなかったものであり、現在行われている収集と整理を続けるとともに、整理の枠組みの検討を行っている。このことは、今年度おこなった第3の活動と関連する。19世紀終わりから20世紀初頭にかけて、日本の国際政治学の基本的な問題は、国際政治学を如何に定義するかということであり、それは、外交史、外交とどのように違うか、ということであった(この問題は、現在にも通ずるものである)。19世紀末から20世紀初頭にかけて、日本においても、考え方の主流は、勢力均衡論であったが、第1次世界大戦後は、国際政治を一体として捉える考え方が台頭し、それも平和論的な色彩が強いものであった。しかしながら、戦間期の後半になると、地域主義的な傾向が顕著になるのである。来年度は、このような日本における国際政治学の変容の基底を明確にしたい。
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