研究概要 |
松井はイタリアでのゲーム理論の学会で発表を行った。また社会ゲームの理論をさらに発展、深化させるため、新たに経済学実験に着手した。具体的には、「声」の経済効果に関する研究(共著者3名)を大学院生らと進め、第一弾が出版の運びとなった。この実験ではこれまで「声」が経済学的に意味を持たないとされてきた独裁者ゲームにおいて、服従者による要求という「声」が大きな意味を持つことが示された。また、社会ゲームや帰納ゲームを分析した「慣習と規範の経済学』(松井著、東洋経済)が日経経済図書文化賞を受賞した。その中でも扱った文化の接触に関する学術論文は国際学術誌Journal of the Japanese and International Economiesに受理された。 松井と清水の貨幣経済に関する共同研究は国際学術誌International Economic Reviewに受理された。 神谷の貨幣に関する論文(共著)も同誌に掲載された。 神谷と清水の共同研究も進展を見せた。論文"Real Indeterminacy of Stationary Equilibria in Matching Models with Media of Exchange"(神谷、清水著)を国際高等研究所研究会「多様性の起源と維持のメカニズム」および日本経済学会秋季大会(於明治大学)にて報告した.この論文では,既存の幾つかの貨幣の探索理論(search theory of money)モデルを包括する一般的モデルを分析し,価格水準・厚生水準が異なる無数の定常均衡が存在すること,すなわち「定常均衡の実物的非決定性」("Real Indeterminacy of Stationary Equilibria")が一般的に発生することを明らかにした.このことにより,従来の比較静学による金融政策の分析は,その分析対象としているモデルの特殊な仮定に依存しており,一般的な妥当性を欠くことも明らかになった.
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