研究概要 |
本研究は,平成14年度から4ヵ年に渡り,理論・実験の両側面から,自主流通米価格形成センター方式の入札市場における価格形成メカニズムと取引実態の意味を解明し,コメの実勢需給をより反映できる代替市場制度を提案することを目指すものである. 第2年度である今年度では,コメ市場実験ソフト開発をほぼ完了した.今後は研究方向に沿ったソフトの微調整等が裸題となる.コメ取引ソフトの完成を待つ間,コメ取引研究の基礎となる一般的入札市場の基本モデルを走らせることのできる,シンプルな実験ソフトを完成し実験に使用した. 理論研究においてはこれまで,完全完備情報ゲームの枠組みにおける簡単なコメ入札市場モデル構築を行った.コメ市場は独特の価格ルールを持つため,コメ市場が完全競争であった場合に相当する場合や,独占的である場合を含む,多くのナッシュ均衡が存在する.その多くのナッシュ均衡の中から,さまざまな均衡選択概念に照らし合わせて,頑健性をもつ均衡解の特性が独占価格と独占販売量の支持力と関係があることがわかってきた. 一方予定に沿って今年度においては,コメ入札市場と入札市場モデルとの比較を行った.コメ入札市場では落札者は自らが記入した額で支払いを行う形式であるが,一般入札では落札できた札の中で一番低い額で全ての落札者が支払いを行う形式も行われている.後者は第二価格入札方式にその基礎があると考えられる.本研究ではこれまでのオークション研究では扱われてこなかった,勝者と敗者との心理的な側面を分析に取り入れることによって,第二価格入札市場は頑健でないことを明らかにした.さらに,上記の基本実験ソフトにおいて検証実験を重ねている. 口頭発表:上記の暫定的な成果を東工大におけるVALDESゲーム理論セミナー(2月),都立大COEシンポジウム「学際領域におけるオークション研究の現在と可能性」(3月)で発表した.
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