研究概要 |
我が国の大都市圏については通勤を含む居住条件ないし環境の劣悪さが指摘されている.特に,他の先進国には見られないような通勤時の混雑に多大な時間曝される割合が多い.一方,住宅については平均面積が次第に増加しつつあるとはいえ,欧米に比べればいまだに狭小な観は否めない.そこで,本研究では家計,資本および土地の空間的配分を歪めている条件,例えば交通社会資本,土地利用規制,通勤手当,住宅取得の促進・優遇制度などの影響を,理論的にモデル化するとともに,具体的な統計資料を用いて,それらの影響を計量的に明らかにする.上記のような基本的目標のもとに,本年度は日本の都市構造の時系列的変化の把握を目的として,中京都市圏を中心として,家計,雇用,商業集積の空間的分布の時間的変化を統計資料からたどり,それぞれの特徴を整理した. また,道路・鉄道などの交通社会資本が都市の空間的な資源配分に与える影響を,理論的にパーク・アンド・ライドを念頭にモデル化を行い,その特性を分析した.その結果,従来都市経済学で主流であった自家用車の利用を前提とした交通需要と異なり,潜在的な自家用車利用と鉄道利用の混在によって,屈折需要曲線が生み出されることにより,鉄道の参入・退出を自由にした長期的均衡においては,都市規模の拡大によって鉄道料金が上昇したり,鉄道敷設の固定費用が上昇すると料金が逆に減少したりする逆説的な比較静学結果が得られた.
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