研究概要 |
我が国の大都市圏については通勤を含む居住条件ないし環境の劣悪さが指摘されている.特に,他の先進国には見られないような通勤時の混雑に多大な時間曝される割合が多い.一方,住宅については平均面積が次第に増加しつつあるとはいえ,欧米に比べればいまだに狭小な観は否めない.そこで,本研究では家計,資本および土地の空間的配分を歪めている条件,例えば交通社会資本,土地利用規制,通勤手当,住宅取得の促進・優遇制度などの影響を,理論的にモデル化するとともに,具体的な統計資料を用いて,それらの影響を計量的に明らかにする. 上記のような基本的目標のもとに,本年度は、まず、日本の都市構造の時系列的変化の把握を目的として,日本の住宅と土地市場の特徴と問題点について、国際比較をまじえて整理した. 次に、都市構造が都市で働く人々にどのような影響を及ぼすのかについて、都市構造をもつ労働市場をモデル化し、分析を行った。その結果、例えば、都市規模や都市内通勤網が失業者の職探し行動、ひいては都市失業率にどのような影響が及ぶのかが明らかになり、都市政策を議論する際に労働市場への影響を考慮すべきであることが示された。 更に、都市における経済活動の特徴が出生率にどのような影響をもたらすのかについても理論的に分析を行い、地方で出生率が高く、都市部で低いという構造が、地方から都市部への労働力移動を通じて維持されることを明らかにした。
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