研究概要 |
今年度は以下の4つの研究テーマについて新たな知見を得た。 (1)GARCHモデルにおける構造変化に関する研究 構造変化に関する想定誤差から生じる見かけ上のボラティリティの持続性を理論モデルによってある程度説明することが出来た。その結果をA Note on Volatility Persistence and Structural Changes in GARCH Modelsとしてまとめた。また構造変化の新たな検定法を提案する2つの論文:The Cusum Test for the Consistency of Parameters in GARCH(1,1) Models、及びTest for Structural Change in ARIMA Modelsをまとめた(いずれもS.Lee, K.Kawai, K.Maekawa)。いずれの検定法も従来の検定法より優れていることが示された。 (2)株価、為替などの収益率の分布の非正規性の研究 株価など金融資産の収益率の分布は一般に正規分布に従わない。非正規分布の中からGH分布とNIG分布に着目し、日本の株価データに対する適合度を調べ、さらにそれらの分布を仮定した場合とブラック・ショールズモデルを仮定した場合とのオプション価格のシミュレーションによる比較を行った。その結果GH分布やNIG分布は正規分布より適合性が高いごとが明らかになった。 (3)株価のジャンプを伴う拡散過程モデルの研究 ジャンプを伴う株価過程モデルの応用事例として、収益率に正規分布を仮定しないマーク付きジャンプ過程モデルを日本の株価チックデータに対して適用し、適合性の検証を行った。その結果このモデルの適合度が高いことが示された。 (4)ウェーブレット分析を用いた金融時系列の分析として次の二つの論文をまとめた。 "Wavelet-Based Beta Estimation : A Note" (H.Yamada)及び"Do Stock Prices Contain Predictive Information on Business Turning Points? A Wavelet Analysis" (H.Yamada and Y.Honda)。金融時系列分析においてもウェーブレット分析が効果的であることが示された。 なお、これらの研究におけるシミュレーション分析にパソコン並列処理が有効であった。
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