研究概要 |
本研究で得られた主な成果は以下の5つである。 (1)単位根を持ち複数の未知の時点において構造変化を伴う時系列モデルにおける、構造変化点の検定 単位根を持つ時系列モデルにおける構造変化検定に関する既存の方法(M.Hatanaka and K.Yamada 1999)が持っていた欠点を克服する方法を提案し、シミュレーションによってその検定のパフォーマンスの良さを示した。(論文:Maekawa, Z.He, K.Tee, 2004)。また説明変数が単位根を持つ場合の回帰分析に関する漸近理論を展開した。(Z.He, K.Maekawa, M.McALeer 2003、K.Maekawa and H.Hisamatsu 2002) (2)ARCH(∞)モデルにおける構造変化のM検定(S.Lee et al.2004) ARCH(∞)モデルにおける分散方程式の構造変化のCUSU検定を提案し、シミュレーションによってその検定のパフォーマンスの良さを示した。さらにこの検定を用いて円・ドル為替レートの実証分析を行い有意な結果を得た。 (3)ジャンプを伴う株価の拡散モデルの推定と検定(K.Maekawa et al, 2005) 経済時系列における構造変化は、むしろジャンプと見なす方が適切な場合が多いので、Jump Diffusion Modelの研究も行った。Kou (2002)のJump Diffusion ModelとBarndorff-Nielsen and Shephard (2004)のBP検定を現実の日本の株価データに応用した結果、多くの株価過程はジャンプ付拡散過程であるという結果を得た。 (4)株価の高頻度データの時系列モデル分析(森本2005、T.Morimoto 2005) 株価ティックデータのような高頻度データは、日内の季節変動、ジャンプ、構造変化など複雑な変動を伴っている。マーク付き点過程モデルのような高頻度データに対する既存のモデルを現実の日本のデータに応用し実証分析を行った。またシミュレーションによってモデルのパフォーマンスを分析した。今後この分野の研究を継続したい。 (5)経済時系列のウェーブレット分析(H.Yamada 2005の2つの論文) 構造変化をパラメトリックな経済時系列モデルの枠組みで扱うには限界がある。より柔軟な方法としてウェーブレット分析を試み、ウェーブレット分析が有効であることが示された。
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