研究概要 |
本年度の研究成果の内、次の二論文の概要は次の通り。 「大都市の集積の利益:東京は特殊か」は,札幌,仙台,東京,名古屋,大阪,広島,福岡の7都市のオフィス業務に関する生産性に違いがあるのかどうかを検証した研究である.この研究では,オフィス業務の生産性は局所的な集積度と都市全体の集積度によって決定するものと想定している. 分析結果から,集積の利益が生産性に与える影響は7都市間で有意な差がみられず,オフィス業務に関して同一の生産技術を持つことがわかった.東京のような巨大都市でオフィス業務の生産性が高いように感じられるのは,都市全体の規模による広域的な集積効果が大きいためであることが推測される. 「都心の容積率緩和の費用便益:ITSによる混雑料金を考慮に入れた分析」は,オフィスの床面積供給に関して容積率規制がある経済において,規制を緩和したときに得られる便益と費用を計測した研究である.具体的には,(1)東京都心の居住用およびオフィス用の容積率緩和と(2)環状自動車道のロードプライシングとを併用した政策パッケージによる費用便益分析を行った。 分析結果より,23区全体において,現状の床面積を20%だけ増やすような容積率緩和がもたらす便益は現在価値で評価した地価上昇金額7.3兆円になる.単位時間コストを4319円に想定した場合,便益から混雑時間費用増加額を差し引くと、マイナス3千億円になることがわかった.丸の内・大手町地区だけで容積率規制を20%緩和した場合には、23区全体で20%増やした時に比べて,労働者の増加は4.43%の増大でしかない。推計を比例的に縮小した場合,便益は4000億円,混雑時間費用は3233億円になるので,767億円の純便益が得られることがわかった.
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