研究概要 |
平成15年度の研究では,昨年度の研究を踏まえて行った.雪印乳業(株)の食中毒事件に関しては,企業風土の原点を確かめるべく,北海道八雲町で現地調査を行った.八雲工場は昭和56年に閉鎖されてはいたものの,八雲町自体が酪農に力を入れているということが,乳牛に対する記念碑の設置からもうかがわれた.昭和30年に八雲工場の乳製品が東京で食中毒事件を起こしたことを反省し,二度とこのようなことを起こさないようにと,昭和60年まで毎年入社式に社長が訓示をしていたが,昭和61年以降これをやめたところ,大阪での事故が発生したことは企業風土,それを支える企業文化の大切さを改めて示したものと言える.この企業風土の原点となる八雲工場の事故及び大阪工場の低脂肪乳製品事故の原因となる大樹工場での事故当時の状況等を北海道札幌市に出張し,北海道新聞社および札幌市立図書館で,当時の新聞のマイクロフィッシュや縮刷版を検索し,直接一次情報に接することにより,企業風土,企業文化の醸成過程が分かった. 明石市の花火大会歩道橋事故については,刑事事件としての裁判が続く中で新しい情報が開示され,その内容を分析するにつれ,ますますこの事故が組織事故であることが明らかになった.主催者の市,警察,警備会社の三つの組織がしっくりとかみ合わず,組織エラーを起こしたことが分かった.組織人間工学の分析手法であるトライコーン分析により,この過程が明らかになった.平成15年度には,システム性災害とも呼べる事故が多発した.ブリヂストン栃木工場の火災,出光石油の苫小牧貯油タンクの火災,JR中央線の線路切替工事に伴う事故等が代表的なものである.これらの事故に共通なのが組織エラーともいうべきものである.事故の原因は一見それぞれ異なるように見えるが,組織人間工学的視点から見ると同じ状況として捉えられる.これらについて今後明らかにする必要がある.
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