研究課題/領域番号 |
14340028
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小澤 正直 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (40126313)
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研究分担者 |
田谷 久雄 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助手 (40257241)
尾畑 伸明 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (10169360)
日合 文雄 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (30092571)
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キーワード | 測定誤差 / 擾乱 / 不確定性原理 / 保存法則 / 量子計算 / 量子測定 / 量子計算素子 / 制御否定ゲート |
研究概要 |
測定精度と擾乱に関して従来からHeisenberg不確定性原理として唱えられてきた関係を再検討して、その適用範囲を解明し、適用範囲に制限のない一般の測定について成り立つ関係を確立した。この基礎研究は、量子情報処理の効率の限界及び量子暗号の安全性の基礎を新しい不確定性原理から演繹的に導くために、理論展開の根幹として重要な役割を果たす。1927年にHeisenbergによって唱えられた不確定性原理によれば、質点の位置を高い精度で測定すると必然的にその平均誤差に反比例する大きさの運動量の擾乱がもたらされるとされる。しかし、Heisenbergの議論で一般的に示されたことは、位置の測定精度と測定器がもたらす運動量の擾乱との関係ではなく、任意の状態における位置の標準偏差と運動量の標準偏差の積がPlanck定数で定まるある一定値以上であるということであった。以来、この不等式がガンマ線顕微鏡の思考実験に顕著な測定精度と測定の擾乱の関係を表すとの誤解が広く流布した。本研究により、任意の測定装置によって任意の物理量Aを測定するとき、その誤差ε(A)と他の物理量Bが受ける擾乱η(B)の間に、 ε(A)η(B)+ε(A)σ(B)+σ(A)η(B)≧(1/2)|<[A,B]>|(SU) という関係式が成立することが導かれた。ここに、σは測定の初期状態における標準偏差を表す。この関係式の導出から、誤差ε(A)と擾乱η(B)が測定対象の初期状態から独立である場合には、従来、Heisenberg不確定性原理として唱えられてきた関係式 ε(A)η(B)≧(1/2)|[<[A,B]>|(SU) が導かれることも得られた。次に不確定性原理と保存法則の帰結として、スピンの成分で計算基底を表現するような量子計算実現のための標準モデルでは、角運動量保存法則によって引き起こされる量子計算素子実現の精度に一定の量子限界が存在し、nビット以下の補助量子ビットをもつようなユニタリ作用素で物理的に制御否定素子を実現する場合に、少なくとも1/(4n^2)以上の誤り確率が発生することが導かれた。
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