研究概要 |
1.普遍的不確定性原理により,任意の量子測定の量子平均二乗誤差と擾乱の関係が明らかにされたが,量子平均二乗誤差がゼロになる測定の性質はこれまで理論的に解明されていなかった。本研究では、量子完全相関の概念を新たに導入して、量子平均二乗誤差と量子完全相関の関係を確立して、それらの問題を解決した。 2.Banacloche, Kimble, Enkらによって、電磁場を制御場とする量子計算素子の誤り確率の限界が平均光子数に反比例することが示されているが、本年度の研究では,実際にモデルによらないで普遍的不確定性原理と保存法則から導かれた誤り確率の限界は、モデルを用いて位相作用素の不確定性から導いたのと同等な限界を与えることを示した。 3.従来の量子推定理論では、すべての観測量が利用可能であるとされていたが、局所的観測量だけが利用可能な問題に対する量子推定理論の一般化を行い、局所的観測の平均二乗誤差の限界に関する量子Fisher情報量を明示的に与えることにより、そのような推定におけるCramer-Rao型の不等式を確立した。 4.従来、一様量子回路族と量子Turing機械の有界誤差を許す範囲での計算量的同等性が示されていたが、本研究において、有限生成一様量子回路族のクラスを新たに導入し、有限生成一様量子回路族と量子Turing機械が完全に計算量的同等であることが示された。 5.共同研究者の日合文雄はPetzらとの共同研究で、多変数の非可換確率変数に対する自由確率論的な圧力の概念を定義し,それのLegendre変換とVoiculescuの自由エントロピーを比較した。これによって自由エントロピー論に新しい観点を導入した。 6.共同研究者の尾畑伸明は、量子確率論におけるブール独立性に対応するグラフ構造をグラフの星型積として明らかにし、付随する中心極限定理によって、成長する星型グラフのスペクトルを求めた。
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