研究概要 |
本研究の目的は,研究代表者である根上が1986年に提唱した「有限な平面的被覆を持つグラフは射影平面に埋め込み可能であろう」という予想の解決に向けて,組織的な研究を行うことである。その予想は国内外の位相幾何学的グラフ理論研究者によって支持され,「平面被覆予想」と呼ばれて研究が続けられている。そこで,今年度は,「平面被覆予想」に関連する国内外の研究動向を調査するとともに,グラフの平面的被覆を解析するために利用できそうな他分野の手法を収集することを目標とし,国内外の研究者と広く交流を持つことに力を注いだ。実際,韓国の項浦工科大学で開催されたグラフ理論の国際会議,関西グラフ理論研究集会,応用数学合同研究集会などに参加し,多くの研究者と情報交換を行った。また,2003年1月より横浜国立大学に客員研究員として滞在している米国研究者Dan Archdeacon氏に,米国の「平面被覆予想」に関する研究動向について講義していただいた。さらに,MathSciNetを利用して,本研究に関連しそうな論文の収集を行った。このような活動の結果,位相幾何学的グラフ理論におけるボルテージ・グラフの概念とトポロジーにおける被覆空間の概念を統合し,基本群と対称群を利用した代数的な議論が「平面被覆予想の有限化」の道を拓く可能性があること,また,三角形分割やグラフの再埋蔵の理論を利用することで,「平面被覆予想」の部分的な解決を与えられることなどの知見を得た。
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