フラクタルの数学的基礎

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14340034
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 木上 淳 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90202035)
• 研究分担者: 長田 博文 九州大学, 数理学研究科, 教授 (20177207) ; 宍倉 光広 京都大学, 理学研究科, 教授 (70192606) ; 熊谷 隆 京都大学, 数理解析研究所, 助教授 (90234509) ; 伊藤 俊次 金沢大学, 工学部, 教授 (30055321) ; 服部 哲弥 東北大学, 理学研究科, 教授 (10180902)
• キーワード: フラクタル / 拡散過程 / 熱核 / ジュリア集合

研究概要

木上は一般の測度-距離空間上のディリクレ形式から定義される熱核に対して、測度のvolume doubling propertyのもとでexit timeの評価とlocal Nash inequalityが熱核のある種の上からの評価と同値であることを示した。さらに一般のresistance formに対して、境界が有限個の点である場合のgreen関数の定義をあたえ、そのgreen関数がresistance metricに関してLipschitz連続であることを示した。また、そのgreen関数を用いて測度に値を持つLaplacianの定義を与えた。
日野は一般の有限測度空間上で定義された保存的拡散半群についてVaradhan型の短時間漸近挙動を証明し、極限が内在的距離を用いて表されることを示した。さらにそのフラクタル上の拡散過程への応用について考察した。
伊藤は特別な条件をみたす代数的数の組の修正ヤコビ・ペロン法による近似について研究し、近似の精度に関する評価を得た。
服部はフラクタル的な格子を代表とするグラフ上のランダム・ウォークと繰り込み群に関する研究をおこない、その結果を従来の研究成果とともに著書として纏めた。
熊谷は、異なった次元を持つフラクタルを張り合わせた空間上の拡散過程の研究を行った。まずベゾフ空間のトレースの理論を援用することで2次形式の正則性を示し、熱核の短時間挙動についての詳しい評価をえた。さらにその評価を用いて短い時間スケールでみたとき粒子が最も通りやすい経路のエネルギー関数の変分問題の解としての特徴付けを得た。
亀山はpostcritically finiteな有限分岐的な被覆のジユリア集合について研究し、ジュリア集合の存在の証明、ジュリア集合ファトウ集合の特徴付け、postcritically finiteな有理写像がmatingであるための必要十分条件などを与えた。

研究成果

• [文献書誌] Hambly, B.M., Kumagai, T.: "Diffusion processes on fractal fields : heat kernel estimates and large deviations"Probab. Theory Related Fields. 127. 305-352 (2003)
• [文献書誌] Ito, Shunji, Fujii, Junko, Higashino, Hiroko, Yasutomi, Shin-ichi: J. Number Theory. 99. 255-283 (2003)
• [文献書誌] Hino, Masanori, Ramrez, Jos A.: "Small-time Gaussian behavior of symmetric diffusion semigroups"Ann.Probab.. 31. 1254-1295 (2003)
• [文献書誌] Kigami, Jun: "Harmonic analysis for resistance forms"J.Funct.Anal.. 204-NO.2. 399-444 (2003)
• [文献書誌] Kameyama, Atsushi: "On Julia sets of postcritically finite branched coverings. I. Coding of Julia sets"J.Math.Soc.Japan. 55. 439-454 (2003)
• [文献書誌] 服部 哲弥: "ランダム・ウォークと繰り込み群"共立出版(出版予定). (2004)