研究概要 |
本研究課題では,開凸錐上の等質チューブ領域や,等質シーゲル領域上の調和解析を,その領域に単純推移的に作用する分裂可解リー群Gを通して研究した.特に,ポアッソン核の調和性と,ジーゲル領域の幾何学的な性質との関係を追究し,ジーゲル領域のシロフ境界の計量幾何学的な性質が,核の調和性に決定的な影響を及ぼしていることを解明した.論文は,J.Funct.Analに掲載されている.その論文で扱ったセゲー核に付随するCayley変換や,以前に取り扱ったバーグマン核に付随するCayley変換,及びそれより前にPenneyが導入していたジーゲル領域の定義データにある凸錐の特性函数に付随するCayley変換を一般化して,Gのリー代数\mathfrak{g}上の認容線型形式をパラメタとするCayley変換の族を考えて,これらのCayley変換の性質,特にそれらが,等質ジーゲル領域を等質有界領域に写す双有利写像であること等について詳しく調べた.論文はDiff.Geom.Appl.に掲載されている. さらに,等質開凸錐の中で,擬逆元写像の解析接続が,付随するチューブ領域を保つという性質を以て,対称錐を特徴づけることに成功した.これは行列論における古典的な事実:複素対称行列Zの実部が正定値であるための必要十分条件は,Zが逆行列を持ち,Z^∧{-1}の実部が正定値である------がすでに対称錐に特徴的な性質であることを示すものである.甲斐千舟との共著学術論文としてまとめ,現在投稿中である. 研究分担者の伊師英之は,等質ジーゲル領域のシロフ境界上の調和解析を研究した.特に階数が1のときは,このシロフ境界はハイゼンベルグ群に微分同相であり,そこでの不変CRラプラシアン,およびその一般化である作用素の固有空間の構造を詳しく調べ,そこに現れる表現の規約分解について,詳しく解析した. さらに分担者梅田亨は,Koszul complexを一般線型環gl(n)の普遍包絡環におけるロンスキ関係に応用し,不変微分作用素の代数的な性質にかんする結果を得た.論文はComm.Math.Helv.に掲載された.
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