研究概要 |
本年度は前年度の研究で得られた結果,すなわち,「曲面上の部分双曲的力学系についての物理測度の有限基本系がgenericな条件の下で存在する」という結果の整理と拡張,およびエノン写像についてのBenedicks-Carlesonの定理(ストレンジアトラクタの存在)について新しい証明を与える試みを中心に研究を進めた.前者については,国内のいくつかの研究集会とベルギー,ブラジル,フランスで開催された国際研究集会等において結果を発表した.そしてそこで得られたコメント等を反映させて論文の最終版を完成させ現在投稿中である.また2004年1月2月のフランス(Paris, Ecole Polytechnique)滞在中に先方の研究者との議論の中で結果の精密化や多次元の場合への拡張についていくつかの重要な結果を得た.精密化についての結果は現在共同で論文を執筆中である.また私の今後の研究の主目標である多次元の場合には主に2つの困難が知られていたが,そのうちの一つはここで得られた結果によって既に解決した.今後はもう一方の困難を解決し本研究の主要な結果として部分双曲的力学系についての基本的な定理を得ることを目標にする.後者については,新しい証明を数理解析研究所における研究集会(数理研特別計画「Benedicks-Carleson理論とその周辺」)において4日間にわたって発表し,現在原稿を改訂して講義録を作成中である.講義録は来年度中に何らかの形で出版する予定である.
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