平成15年度までに開発したクライオスタット、検出器、MOS機構などを用い、近赤外線撮像多天体分光観測装置(以下、MOIRCS)を国立天文台ハワイ観測所に置いて組み上げた。総合動作実験において真空漏れと冷却不備を見いだし、改良を施した。さらに、観測所のミュレータに取り付けて、装置のたわみやゆがみ、耐久性のテストを行った。その結果、16年8月にMOIRCSの総合テストを終了し、開発を終了した。9月には8.2mすばる望遠鏡に取り付けて、第1回の機能試験観測を行い、3日間の観測期間中、故障もなく、テスト観測データを得ることができた。そのデータを解析した結果、MOIRCSの撮像性能はほぼ、仕様を達成したことを確認した。さらに17年1月の第2回機能試験観測において、多天体分光機能のテストを行い、基本的な機構の動作が確認された。その結果、多天体の分光データを得ることできた。2回の機能試験観測データから、本研究に必要なデータ解析手法を開発し、HAWAII2検出器固有問題点を明らかにした。機能試験の過程で、赤外線観測に基づくhigh-z銀河の進化や分布の研究を行うために、原始銀河団の存在するSSA22領域において、撮像観測を行った。そのデータからLBGやLAEの赤外線同定を行い、その性質を明らかにした。また、この領域における500個もの天体の距離を求めることに成功し、恒星質量に基づく銀河の空間分布を明らかにした。
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