近赤外線撮像多天体分光観測装置(以下、MOIRCS)を国立天文台ハワイ観測所と共同で開発し、すばる望遠鏡に取り付けてhigh-z銀河の観測を基に、大質量銀河の空間分布についての研究を行った。MOIRCSは世界の8m級望遠鏡としては高い空間分解能を保ちつつ、最も広い視野を持つ赤外線撮像装置である。従来の10倍近い広視野を得るため、800万画素のHgCdTe赤外線センサー(HAWAII2)を2個搭載し、それに結像するための冷却光学システムを開発した。内部には冷却結晶レンズとしては世界最大の大きさを持つ光学レンズを有する。望遠鏡に取り付けての性能評価試験において、視野の端まで収差のない良好な星像を得ることを確認した。さらに50以上の天体を同時に分光できる多天体分光機能を開発した。スリットマスクを観測中に交換する機能を持つ。19枚のスリットマスクを観測前に設置し、真空引き、冷却の後、ゲートバルブを開け、本体と結合させる。観測中、本体内の焦点面にマスクを引き出して観測を行う。交換可能な冷却マスクを持つ多天体分光器として世界で初めての機能である。その性能評価についても機能試験観測によって当初の仕様を満たすことを確認した。機能試験観測の一環として、z=3.1に誕生間もない原始銀河団が存在すると言われているSSA22領域の観測を行った。8m級望遠鏡としては最も広い視野での広域赤外線サーベイである。その結果、z=3.1の銀河団に付随すると思われる大質量銀河の集団を発見した。
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