太陽プラズマ噴出現象の発生源となる浮上磁束管の捩れ構造の研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14340060
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 黒河 宏企 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80135508)
• 研究分担者: 一本 潔 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70193456) ; 北井 礼三郎 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40169850) ; 柴田 一成 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70144178) ; 上野 悟 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70303807)
• キーワード: 太陽フレア / 太陽黒点領域 / 磁気エネルギー蓄積機構 / 捩れた磁束管の浮上 / ベクトル磁場測定 / 超狭帯域単色フィルター

研究概要

強い太陽フレアが発生すると、宇宙空間および地上の電気・通信・情報設備が様々な影響を受けることが知られており、又その際、宇宙ステーション等大気圏外で活動している宇宙飛行士の上には健康上無視できない量の放射線が降り注ぐことが危倶されている。従って、強い太陽フレアの発生を事前に予知して、警報を発することが必要不可欠となる。恐らく数時間から2〜3時間前の確実な直前予報が将来の実用上、重要となると考えられる。このためには、強い太陽フレアの発生メカニズムを詳細に解明することが必要である。Xクラスフレアを起した活動領域の進化と磁場構造の特性を一つ一つ詳細に調べ、これらに共通の特徴は何かを見出すことが出来れば、強いフレアを発生させるエネルギー蓄積機構が明らかになるであろう。また、極限状態まで蓄積されたエネルギーを急激に短時間に解放する引き金は何かを見出すことが出来れば、強いフレアの予知につなげることが出来るはずである。この様な観点から、飛騨天文台及び花山天文台で特に詳細に観測されたNOAA9415の領域について詳しく解析した。その結果、次の結論を得た。(1)NOAA9415領域の進化は、捩れた浮上磁束管のモデルで説明できる。(2)NOAA9415領域の主要なフレア活動は、捩れた磁束管浮上に伴う黒点の回転及び固有運動と密接に関係していることが示された。(3)遠く離れた黒点でも、磁束管によって連結している為に、互いに連動している。(4)捩れの少ない部分の磁束管の急速浮上が磁束管の強い捩れ部分の浮上を促進して、大フレア発生の引き金となる。(5)黒点の固有運動の測定が強いフレアの予測に役立つことが明らかになった。
このような結果は、磁場の歪(磁気シアー)構造が光球の下から供給されていることを、強く示唆しているので、これを定量的に実証することが重要である。このため、これを可能にする高空間分解能及び高時間分解能を持つフィルター式ベクトルマグネトグラフの設計製作を行った。用いるフィルターとして、ファブリペロ式とリオ式の長所短所を検討した結果、両方の長所を生かすことの出来るタイプを開発した。偏光変調方式として、KDPや液晶リターダー等による可変位相板と、回転波長板との長短を検討した結果、後者の方式が安定性に優れていると結論して、これを採用した。最適なCCDカメラを選定して購入した。

研究成果

• [文献書誌] K.Yoshimura, H.Kurokawa他: "Close Correlation among Hα Surges, Magnetic Flux Cancellations, and UV Brightenings found at the Edge of an Emerging Flux region"Publication of Astronomical Society of Japan. 55. 313-320 (2003)
• [文献書誌] T.Morimoto, H.Kurokawa: "A New Method for the Determination of 3-D Velocity Fields of Disappearing Solar Filaments"Publication of Astronomical Society of Japan. (in press). (2003)
• [文献書誌] S.Kamio, H.Kurokawa他: "Precise Determination of Cooling Times of Post Flare Loops from the Detailed Comparison betaeen Hα and soft X-ray images"Solar Physics. (in press). (2003)
• [文献書誌] H.Kurokawa他: "Pre-Flare Heating around the Temperature Minimum Region Found Prior to An X-class Flare"COSPAR Colloq. Series. 13. 257-258 (2002)
• [文献書誌] A.Asai, T.Ishii, H.Kurokawa他: "Evolution of Conjugate Footpoints inside flare Ribbons during a Great Two-Ribbon flare on 2001 April 10"The Astrophysical Journal. (in press). (2003)
• [文献書誌] A.Asai, S.Masuda, S.Yokoyama: "Difference between Spatial Distribution of the Hα Kernels and Hard X-ray Sources in a Solar Flare"The Astrophysical Journal. 578. L91-L93 (2002)