研究課題/領域番号 |
14340070
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
湯田 利典 東京大学, 宇宙船研究所, 名誉教授 (60092368)
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研究分担者 |
山本 嘉昭 甲南大学, 理工学部, 教授 (70068112)
大西 宗博 東京大学, 宇宙船研究所, 助手 (10260514)
瀧田 正人 東京大学, 宇宙船研究所, 助教授 (20202161)
堀田 直己 宇都宮大学, 教育学部, 助教授 (60157039)
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キーワード | チベット / 高エネルギーガンマ線 / knee / 太陽の影 / 太陽磁場 / 空気シャワー / 空気シャワーアレイ / 活動的天体 |
研究概要 |
中国と共同で、チベットのヤンパーチン高原(標高4300m)に面積36900平方メートルの高密度空気シャワーアレイを設置し、1)TeV以上の高エネルギーガンマ線を放射する活動的天体の探索と観測、2)Kneeエネルギー領域の一次宇宙線のエネルギースペクトルの観測、及び3)銀河宇宙線による太陽の影の観測を行い、高エネルギー宇宙線の起源と加速の問題、及び太陽近傍磁場構造の研究を行っている。 1999年秋に545台のシンチレーション検出器を7.5m間隔の碁盤目状に配置した総面積22000平方メートルの空気シャワーアレイを建設し、データの取得を開始した。2002年秋には、この装置に190台の検出器を増設し、総面積を36900平方メートルに拡張した。2003年の秋に、装置周辺にさらに検出器を増設し、検出器総数796台の高精度空気シャワーアレイ(Tibet-IIIアレイ)を完成させた。この装置は入射エネルギーが約2TeV以上の宇宙線の到来方向を1度以下の高精度で観測できる世界最高感度の空気シャワーアレイである。 この装置で得られた結果は、昨年7月筑波で開催された第28回国際会議で発表された。 今年度新たに得られた主要な結果は、○Tibet-IIIアレイのデータを使ってknee領域の一次宇宙線全粒子のエネルギースペクトルを求めた。スペクトルの折れ曲がりは3000TeV近辺にあり、変化は緩やかである。この領域の標準的なエネルギースペクトルとして高い評価を得た。 ○1000TeV以上のエネルギー領域での一次宇宙線陽子成分のエネルギースペクトルを求めた。結果は2000年のバースト実験による結果とスムースにつながり、直接観測のデータと組み合わせると一次陽子のスペクトルの折れ曲がりは100TeV近辺になる。この結果と全粒子スペクトルの結果から、kneeを作る宇宙線成分は鉄核など重い粒子であると結論できる。これは超新星残骸での宇宙線衝撃波加速を強く示唆している。 ○地球は秒速30kmの速度で太陽の周りを公転運動しているが、この運動に伴う宇宙線強度の見かけの異方性(Compton-Getting effect)が高精度で観測され、その異方性がエネルギーに依存していることが分かった。これは新しい結果であり、その物理的理由を検討している。
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