1999年、量子常誘電体SrTiO_3の酸素^<16>Oをその同位体^<18>Oで置換したSrTi^<18>O_3(STO18)が相転移温度T_c=22K以下で強誘電性を示すことが報告された。本研究の目的は、この強誘電性の動的発現機構を格子振動モードの立場から解明することである。研究成果は次の通りである。 1.これまで我々は、T_c以下で、2つの強誘電性ソフトモード(高周波側からE_<u1>、E_<u2>モード)を発見している。本年度は、これらのモードの起源を明らかにするため、パルス誘導光散乱測定と誘電率の異方性測定を行った。その結果、E_<u1>モードは電気分極方向の分極揺らぎによるモードであり、E_<u2>モードは電気分極方向と垂直な分極揺らぎによるモードであると確定した。 2.昨年度までに、T_c以上で、E_<u1>、E_<u2>モードに接続する強誘電性E_uソフトモードの存在を示唆する結果を得ている。しかし、このモードは、本来通常の光散乱では観測にかからない(ラマン不活性)モードで、散乱強度がきわめて弱い。本年度は、ハイパーラマン散乱と電場誘起光散乱(ラマン活性化)により、十分な散乱強度を得て、E_uソフトモードのT_c以上での振る舞いを捉えることに成功した。 3.結局、STO18の強誘電性相転移は、E_uソフトモードが凍結することにより起こる(変位型の相転移機構を持つ)と結論づけた。ただし、ソフト化が完全ではない(周波数がT_cでもゼロにならない)ことから、理想的な変位型でないことも判明した。
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