研究概要 |
本研究は,金属ナノ接点,特に量子化コンダクタンスを示す金属単原子接点の電流誘起脆性を実験的に検証するとともに,合金化による金属ナノ接点の高靭化を試みることを目的としている.初年度に得られた主な結果は以下の通りである. 1.Au合金の単原子接点に対応するコンダクタンスヒストグラムの1G_0ピークのバイアス依存性を調べ結果,AuAg, AuCu合金とAuPd, AuPt合金とではピークのバイアス依存性が異なり,AuPd, AuPt合金ではより低い電圧で1G_0ピークが消失することが明らかになった.しかし合金化によるAu接点の高靭化については,まだ明確な結論が得られていない. 2.Au合金接点が示す1G_0コンダクタンスプラトーの平均長さとそのバイアス依存性は溶質元素の種類に余り依存していない.この結果は,1G_0コンダクタンスを示すAu合金単原子接点では,接点原子がAu原子であることを示唆している. 3.Alナノ接点の高バイアス下でのコンダクタンス測定を行なった結果,単原子接点に対応する0.9G_0ピークは0.8Vで消失することが判明した.ピークの減少は単原子接点の生成確率がバイアスの増加につれて低下することが原因であり,高電流密度によるエレクトロマイグレーションが単原子接点の生成確率の低下を引き起こしていると考えられる.一方,単原子接点の寿命は高バイアスでほぼ直線的に低下しているが,これが電流誘起脆性によるものかどうかはまだ明らかではない. 4.Ag, Cu接点のナノ接点の1G_0ピークも約0.8Vで消失することが明らかに奪った.Ag, Cuの単原子接点はAu単原子接点と同じく高い電子透過率の単一チャネルを有しているにもかかわらず,1G_0ピーク消失電圧はAu接点のそれの半分以下である.従ってコンダクタンスチャネルの透過率は,高バイアス下での単原子接点の安定性を左右する要因ではないと考えられる.
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