研究概要 |
本研究は,金属ナノ接点,特に量子化コンダクタンスを示す金属単原子接点の電流誘起脆性を実験的に検証するとともに,合金化による金属ナノ接点の高靭化を試みることを目的としている.平成15年度は,新Au,Ag,Cuナノ接点における電流誘起不安定性の解明を中心に研究を進め,以下の成果を得た. 1.Au,Ag,Cu,Al単原子接点の生成確率が0に低下するバイアスの値は金属によって異なるが,生成確率のバイアス依存性は金属に依らず,普遍的な振る舞いを示す. 2.高バイアス下に置かれたAu,Ag,Cuナノ接点の過渡コンダクタンスは,突然急激な揺らぎを示し,その後に接点が破断する.この揺らぎが発生するコンダクタンスG_<th>は,接点電流Iに比例して増加する. 3.I-G_<th>プロットは接点の安定領域と不安定領域の境界線であり,その勾配は接点の電流誘起不安定性の臨界電流密度を表している.Au,Ag,Cuの臨界電流密度の推定値は,約10^<10>A/cm^2であり,3つの金属は同程度の臨界電流密度を有している. 4.Au,Ag,Cuナノ接点の破断コンダクタンスの分布とそのバイアス依存性を調べた結果,接点電流に依存した接点の安定領域と不安定領域が見出され,それらはコンダクタンス揺らぎから得られるものとほぼ一致している. 5.破断コンダクタンスの測定から,Ag,Cuナノ接点は,10G_0以下の低コンダクタンス域にAuには見られない不安定領域を有することが明らかにされた. 6.定電圧下で接点を開くと,ある時点で接点は臨界電流密度を超えて不安定領域に入り,単原子接点は準安定状態として形成されると考えられる.この解釈により,単原子接点生成確率が高バイアスで低下すること,Auには無い不安定領域を持つAg,Cuでは単原子接点生成確率がAuのそれよりも低バイスで消失すること,などの実験結果を定性的に説明することができる.
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