研究課題/領域番号 |
14340094
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
重松 宏武 島根大学, 教育学部, 助教授 (40281068)
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研究分担者 |
三好 清貴 島根大学, 総合理学部, 助手 (10294365)
松本 一郎 島根大学, 教育学部, 助教授 (30335541)
川口 高明 島根大学, 教育学部, 助教授 (10273913)
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キーワード | 鉛フリー / 強誘電性 / リラクサー / チタン酸バリウム / 層状ペロブスカイト / 圧電性 / 酸素欠損 / 構造相転移 |
研究概要 |
不揮発性メモリーとして強誘電体薄膜(FeRAM)が製品化された。今のところ、ICメモリーカードなどの低容量製品での製品化であるが、いくつかの応用上の問題が解決されれば大容量のDRAMなどもFeRAMに凌駕されるだろう。強誘電体は21世紀のキーマテリアルである。しかし、巨大誘電率をもつリラクサーや、すでに広く使われている圧電素子などの材料は、Pb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3、PbZr_<1-x>Ti_xO_3(PZTと呼ばれる)のような、鉛を含む強誘電体である。鉛の環境への悪影響を考えるとき、鉛フリーな材料の開発が急務になっている。 本研究では、鉛系に変わる材料として、一つには、チタン-バリウム酸化物をベースにリラクサーの開発を試みた。TiO_2リッチ組成からの単結晶育成を試み、従来BaTi_2O_5と呼ばれていた針状結晶が430-480℃付近で強誘電相転移を起こし、その時誘電率が30,000にも達することを見出した。酸素欠損の微妙な違いで、シャープな転移からリラクサー状のブロードな転移に代わるなど興味深い振る舞いが見出された。誘電率、誘電損失、自発分極の値を広い温度範囲で測定し、BaTiO_3と比較した。また、X線回折実験から、強誘電性相転移における結晶対称性の変化や、格子変位の大きさ等が明らかとなった。これらの結果を、2003年8月の電子セラミックス国際会議(MIT)や2004年3月の日本物理学会(九大)において報告した。二つめは、層状スラブ構造をもつSr_2Nb_2O_7をベースに材料開発を試みた。Sr_2Nb_2O_7の強誘電性相転移温度は1342℃と非常に高い。SrをBaで50%ほど置き換えると、その転移温度は室温付近まで低下する。昨年購入したFZ炉を用いて、Ba添加のSr_2Nb_2O_7単結晶の育成を行い、32%まで置換した単結晶を9種類育成し、10-900Kの温度域で誘電特性を詳細に調べた。不整合相転移や低温強誘電転移がBa添加で消失し、新たに別のブロード転移が出現することを明らかにした。ラマン散乱実験やX線回折実験の結果をふまえ、この系の相図の概略を明らかにし、2004年3月の物理学会(九大)で報告した。
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