核磁気共鳴による高温超伝導体渦糸コアの電子状態の研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14340096
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 熊谷 健一 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70029560)
• 研究分担者: 古川 裕次 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50280863) ; 河本 充司 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60251691)
• キーワード: 酸化物高温超伝導 / 磁束状態 / 反強磁性秩序 / 核磁気共鳴 / 核-スピン格子緩和時間

研究概要

本研究では高温超伝導体における渦糸芯における反磁性秩序の検証を試みた。ほぼ最適ホール濃度の高温超伝導体Tl_2Ba_2CuO_6においてTlサイトのNMRのスピンエコーをフーリエ変換してスペクトラムを得て、各スペクトラム周波数での回復曲線から渦糸状態でのT_1を空間分離して求めた。1)Tlサイトでコア近傍のスペクトラム幅が低温で急速に広がる、2)緩和の回復曲線は超伝導部分でのsingle-exponentialに対し、磁束コア部分ではexp(-√<t/τ>)の型である、また、3)T_1^<-1>はコア部分に近づくにつれて2桁近く増大する、さらに、4)磁束コア近傍のT_1^<-1>は20K付近にピークをもつ温度依存性を示すこと、の知見を得て、高温超伝導体渦糸コアで反強磁性オーダーを検証した。このようなTlサイトでの特徴的なNMRの結果は、渦糸コア部分で反強磁性相関が増強される「反強磁性コア」のモデルで理解でき、Tl系において渦糸状態における反強磁性渦糸コアが微視的な観点から示された。加えて、外部磁場依存性の測定から、T_Nは磁場では変化しないが、コア近傍の緩和率は大きく抑制されることを見いだした。さらに、Hg1223系においてもHg-NMRの研究をおこない、同様の結果が得られた。

研究成果

• [文献書誌] K.Kumagai, K.Kakuyanagi, Y.Matsuda, M.Hasegawa: "Antiferromagnetic Vortex Core in HTSC Studies by Spatially Resolved NMR"J.Mag.Mag.Materials. 258-259. 430-435 (2003)
• [文献書誌] K.Kumagai, K.Kakuyanagi, Y.Matsuda, M.Hasegawa: "Antiferromagnetism Induced in the Vortex Core of Tl_2Ba_2CuO_<6+d> Proved by Spatially- Resolved NMR"Acta Physicas Polonica. B34. 471-474 (2003)
• [文献書誌] K.Kumagai, K.Kakuyanagi, Y.Matsuda, M.Hasagawa: "Spatially-Resolved NMR Study on Antieferromanetic vortex core in HTSC"J.Low Temp.Physics. 131. 319-326 (2003)
• [文献書誌] K.Kakuyanagi, K.Kumagai, Y.Matsuda.M.Hasagawa: "NMR Study on the electronic structure of the vortex state in HTSC"J.Low Temp.Physics. 131. 919-923 (2003)
• [文献書誌] K.Kakuyanagi, K.Kumagai, Y.Matsuda, M.Hasagawa: "Antieferromanetic vortex core of Tl_2Ba_2CuO_<6+d> Studied by ^<205>Tl-NMR"Physica C. 388-389. 633-634 (2003)
• [文献書誌] K.Kakuyanagi, K.Kumagai, Y.Matsuda, M.Hasagawa: "Antiferromagnetic Vortex Core in Tl_2Ba_2CuO_<6+d> : Studied by Nuclear Magnetic Resonance"Phys.Rev.Lett.. 90. 197003-197007 (2003)