研究概要 |
超流動ヘリウム3の界面量子状態を超音波分光的に調べるための弾性表面波センサーを開発した。一つはレイリー波を用いたものである。レイリー波は隣接する液体に密度波を放射しながら伝播する。したがって隣接する液体の音響インピーダンスが変化するとその減衰に影響が現れる。レイリー波の減衰は液体の密度・音速をρ_f, ν_f、基板の密度、音速、波長をρ, ν, λとすると、α【approximately equal】ρ_fν_f/ρνλで与えられる。液体ヘリウム4中でのレイリー波の減衰の温度変化を調べた。ヘリウム4の圧力は5気圧から25気圧まで変化させた。過去の文献値から上式を用いて計算した値との一致は良く、作成した素子がヘリウム4の音響インピーダンス変化を捉えていることが分かった。また超流動転移も明確に見えた。もう一種類SH波を用いた表面波センサーを作成した。SH波はその変位が表面と平行であり、液体の粘性変化に対して敏感である。また粘性侵入長以内の基板近傍の液体としか結合せず、液体表面物性のプローブとして優れている。超低温での液体ヘリウム3中では横波が伝播する可能性があり、SH波を使えばその横波を励起することが出来る。超低温でフェルミ縮退した常流動ヘリウム3中のSH波の減衰と位相変化の温度依存性を測定した。常流動ヘリウム3の準粒子寿命は低温でτ∝1/Τ^2に従って長くなる。測定結果は基板が緩和時間を考慮した粘弾性体に接しているとしたモデルでよく説明でき、流体力学的領域から無衝突領域へのクロスオーバーがはっきりと観測できた。弾性表面波センサーの液体ヘリウム研究への有効性が確かめられた。
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