研究概要 |
2次元や1次元の新しいメゾ多孔体基盤に吸着したヘリウムの研究では,先ずヘリウム原子が基盤上に層などの構造を作ってどのように吸着するかを明らかにする必要がある。そこで我々は,吸着ヘリウムと化学ポテンシャルが等しいガスの圧力の温度と吸着量依存の測定から,細孔壁面へのヘリウムの吸着エネルギーや吸着膜の圧縮率を測定する手法を確立した。そして孔径が18-48Åの1次元細孔(FSM-16)壁面に2層までの層形成を明らかにし,4Heの場合は2層目の圧縮率を測定した。そしてこれから求めた18Å細孔基盤での音速は,比熱測定から求めた4Heボース流体の音速と一致する事を明らかにした。これらのことは,2層目の直径がおよそ11Åの4He薄膜チューブが真に1次元のボース流体になることを示している。3Heについては,28Åの1次元細孔においてフェルミ流体を実現する研究を東大物性研と共同研究で行っている。その結果,1.35層程度4Heで壁面を覆った後に3Heを吸着すると3Heは全て流体になることを,10mKまでの比熱測定により発見した。1次元フェルミ流体を検証するには希薄な密度でさらに低温で測定する必要があり,現在装置の改良などを行っている。また理論的には1次元フェルミガスの比熱の計算を行い,これまでに得られた実験結果と比較した。3Heフェルミ流体の研究では,吸着圧力,比熱測定の他にNMRも極めて有効な研究手段である。熱伝導や測定における発熱の問題を克服するためにSQUIDを用いたNMRを試みている。
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