X線非弾性散乱による金属酸化物中の動的電荷揺らぎと格子振動の研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14340105
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 山田 和芳 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (70133923)
• 研究分担者: 井澤 和幸 東北電力株式会社, 研究開発センター, 研究員 ; 水木 純一郎 日本原子力研究所, 放射光科学研究センター, 次長 (90354977) ; 藤田 全基 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (20303894) ; 大山 研司 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (60241569) ; 小野寺 秀也 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50005972)
• キーワード: 高温超伝導 / 電子-格子相互作用 / 格子振動 / X線非弾性散乱 / 放射光

研究概要

Spring-8放射光施設のx線非弾性散乱装置を用いて、銅酸化物超伝導体La2-xSrxCuO4の超伝導相を含む広いキャリヤー濃度領域での格子振動の分散関係を研究した。放射光のビームサイズは、直径約0.1mmと小さく、我々が作成した濃度傾斜単結晶を用いると同じ実験条件下で異なる濃度の試料の測定が可熊となる。その結果、銅-酸素ボンドの伸縮モードの格子振動のソフト化とその詳細なドープ量依存性を明らかにした。
いわゆる、ハーフブリージングモードと呼ばれるボンド伸縮モードはドーピングとともに周波数が低下するが、特に超伝導相ではその低下が著しく起こることを初めて明らかにした。このソフト化の大きさのドープ量依存性は、磁気密度変調の周期のドープ量依存性と興味深い類似性を示し、銅酸化物超伝導体における電荷の動的揺らぎとスピンの揺らぎが密接に相関することを示唆している。超伝導相での異常なソフト化のドープ量依存性は、理論的に独立して計算されており、その結果との比較から、今回X線非弾性散乱から得られた結果は、ソフト化の絶対値も含めて半定量的に計算結果を説明することがわかった。この理論モデルでは、銅酸化物超伝導体にドープされた電荷は、自発的に特定の波数で揺らぎ、その周波数がボンド伸縮モードの格子振動と結合することで異常なソフト化を引き起こすと解釈される。今後はこの異常なソフト化と超伝導発現との関連性、およびスピン揺らぎとの関連性を、中性子非弾性散乱実験と平行して調べていく。

研究成果

• [文献書誌] M.Fujita, K.Yamada, et al.: "Magnetic and superconducting phase diagram of electron-doped Prl-xLaCexCuO4"Physica.Rev.B. 67. 014514(5) (2003)
• [文献書誌] H.Hiraka, K.Yamada, et al.: "Reinvestigation of magnetic excitations in the spin density wave of chromium"Phys.Rev.B. 67. 064423(4) (2003)
• [文献書誌] H.Kimura, K.Yamada, et al.: "Synchrotron x-ray diffraction study of a charge stripe order in 1/8-doped La1.875Ba0.125-xSrxCuO4"Phys.Rev.B. 67. 140503(R) (2003)
• [文献書誌] K.Yamada, et al.: "Commensurate Spin Dynamics in the Superconducting Sate of an Electron-Doped Cuprate Superconductor"Phys.Rev.Lett. 90. 137004(4) (2003)
• [文献書誌] C.H.Lee, K.Yamada, et al.: "Spin pseudgap in La2-xSrxCuO4 Studied by Neutron Scattering"Phys.Rev.B. 67. 134521(6) (2003)
• [文献書誌] K.Izawa, K.Yamada, et al.: "Scanning SQUID microscopy of superconducting La_<2-x>Sr_xCuO_4 single Crystals"Physica B. 329-333. 783-784 (2003)
• [文献書誌] K.Ohoyama, et al.: "Long Periodic magnetic structure in CeB2C2"J.Phys.Soc.Jpn.. 73. 3303-3304 (2003)
• [文献書誌] K.Ohoyama, et al.: "Anomalous Magnetic Scattering in Tetragonal RB2C2(R=rate earth) Observed by Neutron Diffraction"J.Phys.Condenced Matter. 15. S2127-S2130 (2003)
• [文献書誌] H.Onodera, et al.: "Magnetic Phase Diagrams of Dy0.8Gd0.2B2C2"J.Phys.Condenced Matter. 15. 3231-3236 (2003)