研究概要 |
少数キャリアー物質Ceモノプニクタイトには,比較的不安定な4f電子軌道と希薄キャリアーとの相互作用に基づく,新しい物理的現象が存在すると考えられる.本研究の目的は,この新しい物理現象についての認識を深めることにある.本年度は以下の研究を行った. (1)CePの高圧下の磁気構造の中性子散乱による研究:CePについては,これまでの研究により,約3GPaまでの圧力下で,磁気ポーラロン状態が結晶化したと考えられる特異な長周期磁気構造が現れ,圧力とともにその周期が短なっていく事を見いだしていた,その結果および報告されている電気抵抗の実験結果から推定すると,約3.5GPaの圧力下で系は強磁性となり,約6GPaで強磁性が消滅すると思われる.本年度は特に,これまでと同一試料を用いて,このことを確認することを目的として,中性子回折の実験を行った.その結果,3.2Gpaの高圧下で系が強磁性のみを示すことを明らかにすることができた. (2)CePの高磁場下の磁気構造のX線回折による研究:CcePの磁化下の磁気相図については,これまで,約6Tまでの中性子回折以外には,直接的な情報がなかった.しかし,これより高磁場下においても,多段の磁気相が存在することが,磁化及び電気抵抗の測定から示唆されており,これの直接的観測が期待されていた.本年度は,このことを研究する目的で,SPring8において約8Tまでの高磁場下のX線回折の実験を行なった(理研播磨研勝又グループとの共同).これは,Ceモノプニクタイドの特異な磁気構造には,特有の超格子変調が伴っているというこれまでの研究結果により,超格子変調構造の観測結果から磁気構造を推定できることを利用したものである.実験の結果,新しく,6T以下の低磁場側で,Γ_8Ce強磁性2重層の,Ce面で11枚周期,および高磁場側で9枚周期の磁気構造の存在が明らかになった.
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