研究概要 |
URu2Si2は正方晶ThCr2Si2型の結晶構造を持ち、低温で生じた磁気秩序はモーメントが結晶c-軸方向を向いた反強磁性構造を持っている。しかし、磁気ブラッグ散乱強度は非常に弱く、得られた磁気モーメントの大きさは僅か0.03μBである。一方で、この系において比熱や電気抵抗等の物理量に17.5Kで大きな変化が観測されている。この問題をNMRにより微視的な立場から調べるために,我々は高圧下29Si-NMR実験を行った。NMR実験により得られた29Si-NMRスペクトルは試料内に反強磁性相と常磁性相の相分離が存在して両者が共存しており、また加圧により反強磁性相の体積が急激に増大している事を示した。この結果より、常圧で観測される磁気モーメントは試料の一部分から生じた信号である事が明らかになった。 正方晶HoCoGa5構造を持つCeTIn5は反強磁性体、もしくはその近傍にある。これらの系の圧力変化を高圧下115In-NQRにより調べた。全ての系で核スピン格子緩和率1/T1に反強磁性スピンの揺らぎが観測された。特にCeCoIn5の常圧において顕著であり、この系は常圧で量子臨界点上に存在する事が明らかになった。超伝導状態では、超伝導転移温度直下にコヒーレントピークが観測されず、また低温で温度の3乗のベキ状の温度変化が観測され、超伝導エネルギーギャップが線上にノードを持つ事が明らかになった。ナイトシフトは、超伝導状態で減少が観測されており、スピン一重項のd-波超伝導が発生している事が分かった。
|