磁性と超伝導競合系の量子相転移と極限環境下新奇物性の研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14340111
• 研究機関: 独立行政法人物質・材料研究機構
• 研究代表者: 寺嶋 太一 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノマテリアル研究所, 主幹研究員 (40343834)
• 研究分担者: 宇治 進也 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノマテリアル研究所, ディレクター (80344430)
• キーワード: 圧力 / 磁場 / ドハース・ファンアルフェン効果 / 強相関電子系 / 有機伝導体 / 強磁性 / 超伝導 / フェルミ面

研究概要

1:dHvA効果測定用高圧セルを開発した。設計パラメーターの改良により、低温での測定可能圧力を従来の20kbarから25kbarまで拡大することに成功した。また、磁場中回転が可能な小型圧力セルを設計、試作した。
2:圧力誘起強磁性超伝導体UGe_2について、磁化容易軸方向の高圧下dHvA効果測定を行い、二つの磁場誘起相転移を含む磁場-圧力相図を決定するとともに、フェルミ面の圧力変化、磁場変化を明らかにした。本化合物の超伝導が磁気揺らぎにより媒介されている可能性が議論されているが、今回得られた結果は(既報の磁化困難軸方向の結果とあわせて)、磁気揺らぎによる準粒子の質量増強効果が、強磁性転移そのものではなく、強磁性相内で発現する起源不明のもうひとつの磁気的転移に由来することを示した。
3:圧力誘起反強磁性超伝導体CeIn_3について、上記1で開発した高圧セルを用いて高圧下dHvA効果測定を開始した。現在までに25kbarまでの測定を行い、圧力とともに準粒子有効質量が増大することを見だした。この圧力範囲ではフェルミ面に不連続な変化は見られなかった。本化合物の反強磁性が消失する量子臨界点は26kbarであり、次年度この圧力以上の測定を行う。
4:磁場誘起超伝導体λ-(BETS)_2Fe_xGa_<1-x>Cl_4について、種々の組成xにおける相図を決定し、それらが基本的にJaccarino-Peter補償効果により説明できることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] T.Terashima, S.Uji, 他7名: "Magnetic phase diagram and the pressure and field dependence of the Fermi surface in UGe_2"Physical Review B. 65・17. 174501-1-174501-5 (2002)
• [文献書誌] T.Terashima, S.Uji, 他7名: "De Haas-van Alphen Effect Studies on the Ferromagnetic Superconductor UGe_2 under High Pressure"Journal of the Physical Society of Japan. 71・Suppl.. 29-32 (2002)
• [文献書誌] S.Uji, T.Terashima, 他12名: "Magnetic phase diagram in field induced superconductors λ-(BETS)_2Fe_xGa_<1-x>Cl_4"International Journal of Modern Physics B. 16・20, 21&22. 3084-3088 (2002)
• [文献書誌] S.Uji, T.Terashima, 他12名: "Global Phase Diagram of the Magnetic Field-Induced Organic Superconductors λ-(BETS)_2Fe_xGa_<1-x>Cl_4"Journal of the Physical Society of Japan. 72・2. 369-373 (2003)
• [文献書誌] T.Terashima, S.Uji, 他7名: "Fermi Surface Studies of the Ferromagnetic Superconductor UGe_2 Under High Pressure"Acta Physica Polonica B. 34・2. 427-430 (2003)
• [文献書誌] H.Aoki, T.Terashima, S.Uji, 他3名: "Evolution of Fermi Surface of Strongly Correlated f Electron System under Hydrostatic and Uniaxial Pressures"Journal of Physics : Condensed Matter 14, 10705 (2002). 14・44. 10705-10708 (2002)