本年度は、レーザ場上での、液滴の形成(nucleation)と成長(growth)についての研究に大きな進展が見られた。過飽和蒸気の条件下、塩化アンモニウムをアンモニアと塩酸の蒸気で生成させることにより、それを核とした微小液滴の生成実験を行った。その結果、5mWのレーザ出力のもと、6μm程度の液滴の光トラップに成功した。注入した光エネルギーにたいする、トラップ効率Qをもとめたところ、Q=0.46の値が得られた。これまでに報告されている、光トラップ実験での、Qの最大値は0.08であり、今回の実験では、それを一桁上回るトラップ効率が実現できたわけである。このような高いトラップ効率をなしえたのは、1)対物100倍のレンズを使うなど、光学系を工夫したこと、および、2)液滴が臨界サイズまで成長できる実験条件の設定に成功したことが挙げられる。 さらに特筆される成果として、光駆動型のミクロモータの実験がある。ラセンの形状をした物体にミクロビーズを粘着させ、そのビーズに焦点をあて、光トラップしたところ、光圧に駆動されて、光軸周りの回転運動がされることを、実験でしめした。重要なこととして、同じ形状の物体でありながら、粘着したビーズの位置に依存して、回転方向が反転することを示したことがある。非接触の光駆動ミクロモータのモデルとして興味深い結果であるといえよう。 また、長鎖DNAを折りたたんでコンパクトにしたものは、、レーザの光軸上に直線的に配向することを見出した。無修飾の高分子を、このように容易に並べることが可能であることを示したものとして、重要な結果であるといえる。
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