研究概要 |
非平衡開放系の物理を理解することは、宇宙から生物にいたるまで、さまざまなスケールの物理を考える際に重要な課題である。そこで、われわれはマイクロメートル〜ミリメートルのスケールの定常的な非平衡開放条件を集光レーザー場を用いて形成することを目的として研究を進めてきた。すなわち、集光レーザーによって物体をトラップしながら、光子としてのエネルギー注入による非平衡開放条件下で引き起こされる動的な非線形現象についての実験をデザインし、非平衡開放系に関する実験モデル系の確立、理論的基盤の構築を目指した。その結果、次に示すような重要な成果を得ることができた。 1,集光レーザー場中における高分子の周期的構造変化 2,集光レーザー場を時間的に変化させることによるダイナミクスの観察 3,レーザーにより誘起されるマイクロメートルスケールの相分離現象の制御 4,レーザーエネルギー注入による液滴の自発的運動 これらの結果は、集光レーザーをエネルギー注入源とする非平衡開放場であると捉えることにより説明でき、微分方程式に書き下ろすことが可能である。このような定式化により、実験系の制御やデザインができるようになってきている。理論的考察を通じて、リズムやパターンが創出されるには、ある少数のモードにのみエネルギーが注入され、そのエネルギーが散逸する際に、非線形特性が有効に絡むことが必要であることを明らかにした。このように、さらに研究を飛躍させるための基盤的な研究成果を得ることができた。
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