研究概要 |
液晶電気対流系では、液晶分子の配向制御によって場の対称性の異なる2種類の系をつくることができ、それぞれの系に特有の非平衡マクロ揺らぎ(時空カオス)が現れる。まず連続回転対称性を持つホメオトロピック系で観測される時空カオスであるソフトモード乱流について以下のことが明らかとなった。 ・ソフトモード乱流には、対流場と液晶配向場の相互作用の対称性によってノーマル・ロールとオブリーク・ロールの2種類がある。これらは印加電圧の周波数で転移するが、現れるパターンの転移は秩序-無秩序相転移であることがわかった。 ・ソフトモード乱流の相関距離ξと制御パラメータεとの間にξ∝ε^<-1/2>の関係があることがわかった。 ・準1次元ホメオトロピック系では、一種の有限サイズ効果によって2次元系と比べてソフトモード乱流の発生点が高い制御パラメータにシフトすることがわかった。 ・ソフトモード乱流の揺らぎの相関時間を求めることによって、次元性と揺らぎの時間的性質との関係を調べた結果,相関時間は2次元性によらないことがわかった. 一方、連続回転対称性が強制的に破れているプレーナー系では、欠陥が周期的に配列した欠陥格子パターンが現れる。欠陥格子について次のことを明らかにした。 ・欠陥格子は、アブノーマル・ロール不安定性とスキュード・バリコース不安定性による2つのモードの重ね合せによって生じていることがわかった。 ・制御パラメータである印加電圧を上げると、格子が部分的に崩壊して乱流化する現象を見出した。これは時空カオスの一典型例である時空間欠性である。 ・このような時空間欠性を示す欠陥格子に対して、印加電圧の振幅を格子の固有振動数で変調させると、乱流領域に格子が再生される現象を見出した。これは,大きな空間自由度をもつ系におけるカオス制御,すなわち時空カオス制御が実現されたことを意味する。
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