研究概要 |
本研究では深部低周波地震の発生メカニズムの物理過程として明らかにすることを目指している.さらに,Obara (2002)により発見された深部低周波微動についても,地殻下部に発生する深部低周波地震との波動特性に比較から,それらの発生機構についての考察も行った. まず,2001年7月に秋田県北部で発生した深部低周波地震と日光足尾地域の活発な深部低周波地震の群発活動に注目して,それら震源における波動励起の特性を,ここで開発した「平均散逸スペクトル」という解析手法で解明した.秋田県北部の深部低周波地震では,複数の励起源があることを明らかにし,さらにその広がりは約1km〜2km程度であることを示した.日光足尾地域では活発な群発活動があり,その震源を精度良く再決定して,震源域の広がりと時間推移を解析した結果,最初の2〜3時間の間に発生した地震は極めて相似な波形をしており,その震源域も水平方向に1km程度の広がりで,殆ど同じ深さで発生している事が明らかとなった. さらに,深部低周波微動の波動励起の特性を平均散逸スペクトル法で解明した.深部低周波微動の対象とした微動は2003年と2002年に四国西部で発生した微動で,その結果,1Hz〜5Hzの間に0.5Hz間隔のスペクトルのピークを持つ構造が明らかになった.これらのスペクトル構造は単純な共鳴のモデルでは説明することが困難なものである.非線型定常・因果時系列解析を深部低周波微動と深部低周波地震に適用することで,両者の波動特性の違いを明らかにし,これらの特性と説明するためには,流体の移動に伴う自励振動が有力な物理過程であることを明らかにした. 以上の解析結果より,深部低周波地震や深部低周波微動の発生メカニズムは,流体の共鳴様なタイプのものよりは,流体移動に伴う自励振動タイプのものが有力であることが判明した.
|