本年度は新たに開発された熱対流をしている流体系の温度場・速度場計測システム(14年度・15年度)をもとに、密度成層層状構造と熱プルームの相互作用に焦点を絞って研究を進めた。研究課題は以下の2テーマにわたる;1)密度成層構造を熱対流(熱プルーム)は通過することができるのか?と言う問題、また通過しない時にどのような挙動を示すのか?これは上・下マントルとマントル最下層で発生したプルームとの相互作用を想定したものである。2)薄い重い層を最下部に持つ系を加熱した時の熱プルームの発生状況の研究、このような熱プルームは最下部の重い層を取りこめるのか?と言う間題。これはD"層のダイナミクスや安定性に関係する問題である。1)では層構造の密度差、上下層の粘性率比、ヒーターへの投入電力などをパラメーターにプルームの通過条件を明らかにし、また密度差が大きくて通過出来ない時は上層に新たな熱プルームを作り出すこと、この熱プルーム形成のための時間が余分にかかること、最終的に上部に到達する熱プルームの組成(上下層の液体の混合比)はこの通過条件に大きく依存すること、などが新たな知見として得られた。上部に2次プルームが形成される時は発生場所は下部プルームを取り巻く周辺部に小形のものが複数生成されることもわかり、ホットスポットの分布に新たな見方を提案した。2)では密度差が大きな時、投入パワーが小さな時、下部層層厚が大きな時には下部層を取り込まない熱プルームが生成される。その条件を示す相図を作成した。中間条件の時には下部層を取り込んで上昇したプルームは上昇途中で分裂し、上部層液体からなる上昇する熱プルームと下部層液体を主成分とする沈降する組成プルームに分かれる。マントルにおける代表的なパラメーターは中間領域にあり、地震波トモグラフィーの結果を解釈する時に注意が必要であることをこの結果は示している。
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