研究概要 |
本研究は、破砕物質(以下,ガウジ)を挟む断層の振る舞いを、断層を透過する波動によって監視し、透過波動の変化から、動的な破断に到る過程の詳細を把握し、すべりを予測し、将来の地震予知への手がかりを探るというものである.このため、まず室内実験において、模擬断層を対象として断層の透過波動を観察する必要がある.本年度は、昨年度に引き続き,実験装置の構築ならびに改善と,予備実験をおこなった. 予備実験では,まず,ガウジとして,粒径0.25mm以下の砂を選び,水を含んだ状態で実験を行った.透過させた波動は,2.5MHzの固有振動をもつ振動子から発せられるP波である.模擬断層の上盤にせん断力を徐々に載荷し,一定の時間間隔で透過波動を採取し,波動の変化を観察した.ガウジのない場合(これは以前の実験で結果が得られている.たとえば,Iwasa and Yoshioka, GRL, 1998)と同じように,せん断力の増加とともに,透過波動の振幅の増大が観察された.また,すべりが生じる直前の,準静的なすべりの段階では,振幅に増加率が鈍るという傾向も同様であった. さらに,新たな試みとして,断層に垂直な振動の極性をもつS波についても実験を行った.下盤の,断層近傍に貼った2.5MHzのS波振動子を震源とし,上盤上で,反対側の断層の近傍に貼った振動子で受信した.せん断力の増加による,初動付近の振幅にはほとんど変化が見られなかったが,後続波形にかなりの変化がみられた.これは,ガウジ層によってトラップされた波動の可能性がある.もう少し実験を継続し,解析を行いたいと考えている.
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