研究課題
本研究の目的は、ガウジを含む断層に人為的な弾性波を照射し、断層内のガウジの接触状態の変化が、透過弾性波の変化となって現れることを観察し、そのメカニズムを追及することである.本年は、とくにガウジ層の中で、せん断力の載荷により生起している応力鎖の変化を、シミュレーションによって追求し、そのメカニズムを明らかにすることができた.まず実験によって、断層にせん断応力を徐々に加え、最終的にスティックスリップが発生すること、また、この最終破断に先立って、明瞭な前兆的すべりと、ガウジ層の膨張が必ず発生することを確認した.これに至る全過程で、断層に一定の時間間隔で弾性波を照射し、透過波動を観測した.前兆的なすべりとガウジ層の膨張の開始に伴い、透過波動の振幅は著しく減少することが確認された.このメカニズムを明らかにするべく、本年度より研究分担者として本研究に参加した阪口秀によって、実験を忠実に再現する、離散要素法によるシミュレーションが行われた.すなわち、断層の上盤と下盤には粒子をランダムに固定し、この間におよそ1000個の、一定程度の粒度分布をもった粒子が配置された.せん断力の載荷に先立って圧密が行われたことも実験手順に対応している.シミュレーションは、驚くべき正確さをもって実験を再現した.すなわち、前兆的なすべりとガウジ層の膨張のあと、スティックスリップが発生した.載荷の各段階で、ガウジ層内部の応力鎖の変化を観察すると、以下のメカニズムが明らかとなった.1.せん断力をかける前の段階では、応力鎖はガウジ層内部で一様に分布している.2.せん断力が増加するにつれ、選択的に一部の応力鎖のみが成長し(一種の自己組織化臨界現象)、太い柱を形成する.3.さに力が増すと、この柱が回転して前兆的なすべりが発生すると同時に、ガウジ層の膨張が起きる.4.このあと柱が破壊し、スティックスリップが発生する.
すべて 2005
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Workshop Proc.of Seismic Input Motions Incorporating Recent Geological Studies, OECD/NEA, Tsukuba, Japan (in CD-ROM)
Journal of the Faculty of Environmental Science and Technology, Okayama University Special Edition
ページ: 127-131
Proc.2nd AOGS Meeting (in press)
Tectonophysics (in press)