研究概要 |
本年(2003年)5月に打ち上げられる小惑星探査機MUSES-Cの探査目標天体である近地球型小惑星(25143)1998SF36の表面状態を予測するために,以下のような研究を行った. (1)これまでにわれわれのグループを含む国内外のグループが可視,近赤外波中域において出したデータを集約,解析を行うことによって,ターゲット小惑星のサイズが約600mx300m,自転周期が12.1時間,表面の反射スペクトルタイプがS型であることが確定した.また,表面の反射率,熱特性を推定した. (2)地上観測を通して得られた表面の反射スペクトルは,小惑星表面の各要素表面からの太陽光の反射を積分したものである.したがって,観測スペクトルの結果から小惑星表面の物質種を推定するには次の手続きが必要である. (a)小惑星物質として侯補になりそうないくつかの鉱物種の粉体の光反射スペクトルの入射角,出射角依存性について測定データをとること. (b)これらをもとにしていろいろな入射,出射角について積分し,観測データと合うような鉱物種を求める. 侯補鉱物種として輝石とかんらん石の試料を準備し,これを使って(a)(b)の作業をおこない,ターゲット天体の表面を構成する輝石,かんらん石の存在比を求めた.結果はまだプレリミナリーである. (3)小惑星の表面の物理状態を大きく左右する因子はレゴリスの有無と,もしあるとすればその量である.これを調べるために,実験室内で小惑星模擬物体に高速度弾丸を4km/sで打ちこむ実験を行い,破片の速度分布を求めた.弾丸が斜め入射の場合についてはなお実験が継続している.
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