研究課題
本年度は太平洋海盆スケールの気候変動であるエルニーニョと黒潮変動、とくに上流域の変動との関係、日本南方の中規模渦活動と黒潮蛇行の関係についてモデル実験、海洋データ解析の両面から研究を遂行した。まず太平洋海盆スケールの気候変動であるエルニーニョと黒潮変動、とくに上流域の変動との関係については、モデルおよび海洋観測データ、衛星データの解析から、フィリッピン沖における北赤道海流の分岐緯度が北上する時には黒潮は弱く(ミンダナオ海流は強く)、ルソン海峡からループ状の蛇行を経てリング渦が南シナ海に放出されやすいことがわかった。分岐緯度が南下する場合には北上する黒潮は強く(ミンダナオ海流は弱く)、渦度収支で北向き移流が惑星ベータ効果よりも卓越するために、南シナ海への流入は弱まる。分岐緯度が北上する場合はおおむねエルニーニョ時に対応し、南下する場合はラニーニャ時に対応する。黒潮系暖水の流入の程度が、南シナ海表層の熱収支に影響し、より赤道波動力学の影響を受けるフィリッピン東方海域との熱的なコントラストを生むこと、これが大気下層の気圧差をもたらすことで西風のバーストに影響することが示唆された。ラニーニャ時にはより西風のバーストが起き易い状況になると考えられる。日本南方の中規模渦活動と黒潮蛇行の関係については、東シナ海における黒潮と中規模渦の合体過程、遠州灘沖における大蛇行の成長に及ぼす傾圧的エネルギーの解放過程と海底地形の果たす役割についてモデル結果を詳しく解析し発表した。また本年度は3ヵ年に及んだ研究計画の最終年度にあたるため、全成果を取りまとめて出版するとともに、本計画の成果を基盤として、次期計画に結びつけるべく、黒潮と著しい類似性を示すアグルハス海流の変動などインド洋の海洋気候変動と太平洋の海洋気候変動の比較研究に関する予備的な調査も行った。
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