研究概要 |
今年度は,酸素同位体調整装置を立ち上げるにあたって,すでに測定の実績のある研究施設に出向いて,実際に調整装置ならびに測定装置を詳細に観察するとともに,実験に携わっている研究者に装置の特性や改良すべき点について説明を受けた.訪問した研究機関としては,スイス・ローザンヌ大学の地質学教室および国内の産業総合研究所地球化学情報研究部門微小領域同位体研究グループがあげられる. 産業総合研究所の酸素同位体調整装置および質量分析器を用いて,太平洋の海底および日本の陸域から採取したチャートおよびそこからフッ化水素酸処理により抽出した放散虫殻の酸素同位体比を求めた.予察的な結果としては,チャートについては試料の重量に見合う酸素が二酸化炭素レーザ照射により得られたが,放散虫殻については収量が明らかに減少しており,その原因を探ることが課題となった.殻については,まず物理的に押し固めるか,あるいは,ガラスビーズを作成するかしてからレーザを照射するといった措置を講ずる必要のあることが明らかになった.これらの成果を来年度以降の酸素同位体測定研究に活かしていきたい. 放散虫の生層序学的検討としては,中国南チベット産のチャートの年代が中生代トリアス紀であることが判明し,南京地質古生物研究所の共同研究者とともに研究成果を中国の科学雑誌(微体古生物学報)に発表した. 野外での研究としては,四国西部の秩父累帯や岡山県下の中国帯において地質調査を実施し,酸素同位体測定用のチャート試料を採取した.
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