研究概要 |
西南日本各地において砂岩および凝灰岩よりなる岩盤中のタフォニを調査し,形状の計測とともにタフォニ内壁表面の水分分布を赤外線水分計にて測定した.調査対象は当初予定していた熊本県天草の白嶽砂岩斜面と島根県大田市の河合層砂岩斜面の他に,和歌山県古座川〜三重県熊野市の凝灰岩斜面を加えた.いずれの地域でもタフォニが発達する斜面の裾部には斜面上部から崩落してきた岩塊が散在している.これらの地域で計測の結果,合計20近いタフォニについての形状資料を得ることができた. タフォニの断面形状は斜面の構成岩石や場所にかかわらず互いに類似しており,天井が大きく凹んでいるのに対し,下底は比較的平坦である.タフォニが発達する岩石の共通点としては,粗粒で粒子間結合強度が低いこと,火山岩起源の岩片などを多く含んでいることがあげられる.また,層理面は明瞭ではないが,岩盤斜面に対して受盤構造をなすものが圧倒的に多い. タフォニ内壁表面の水分分布は晴天時のものだけでなく,降雨時のものも測定した.その結果,タフォニの天井部には常時水分の高い部分があり,これは岩盤の受盤構造に支配された水の移動によって説明できる.すなわち,粗粒岩石中に層理面に支配された透水性の異方性が存在し,受盤構造に応じて斜面外壁から内部に水が浸透し,タフォニ天井部分に定常的に水が集まり,水分が高くなる.水分分布と岩盤構造をもとにこのようなタフォニ形状をもたらす概念モデルを確立することができた.今後はこの岩盤構造と水分移動を説明する浸透モデル,さらには水分移動,岩石中の塩分溶出,タフォニ天井部での塩類析出のモデル,そして塩類析出に伴う引っ張り破壊の進行からタフォニ形成,岩盤崩落にいたるモデルを考察することになる.
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