研究概要 |
本年度の研究実績を,以下に箇条書きに述べる。 (1)三波川変成帯と秩父帯北帯の境界領域(高知県吾川郡吾北村)の地質調査を実施し,両帯が異なる構造と岩相で特徴付けられる構造帯であることを明確にした。さらに,この境界領域が50km以上側方(東西方向)に追跡出来ることが明瞭になった。 (2)三波川変成帯北縁部,中央構造線近傍(愛媛県新居浜市)の地質調査を実施し,Yagi and Takeshita(2002)が予想した,変成岩上昇時に発生した,高度変成帯の北側を画する正断層群がこの地域でも存在している証拠を得た。 (3)バーゼル大学(スイス)のHeilbronner教授を約1か月間招聘し,昨年度本科研費で購入したZeiss高級偏光顕微鏡を用いて,三波川変成岩中の変形石英粒子について微細構造画像解析を行った。本研究成果は,論文準備中である。 (4)岡山理科大学板谷研究室において,三波川変成帯低変成度部および秩父帯北帯の泥質岩中の白雲母K-Ar年代測定を行った。その結果,砕屑性白雲母粒子混入の問題は残されるものの,前者で83Ma,後者で93Maの年代値が得られた。したがって,両帯は年代学的に見ても異なる構造帯である可能性が強いという結論が得られた。 (5)秩父帯北帯産の石灰岩の変形実験を,広島大学設置の高温・高圧型岩石変形実験装置を用いて行なった。この実験によって,異なる温度条件における方解石の格子選択配向形成機構がより明確になった。さらに,この実験の成功により,来年度実施予定の白雲母・角閃石からのアルゴン脱ガス実験の準備が整った。
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